にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

最近買った本とか読んだ本とか

 読んだ本

 

 

多分初川上未映子作品。 卵の白身のようにぬめって延びてゆく文章。 下品だったり、およそ知的とはいえない会話そのままの言葉づかいを敢えて多用している。生の言葉であるがゆえに、どことなく切迫した感情があり、感覚的に響いてくるものがある。身体と心と社会、三者の間にひろがる埋まらない欠落。生きる上で歴然とあるのに、無いものとされている醜さについて、という主題だろうか。緑子の母を思う気持ちが一途で胸に刺さる。あまり表立たない語り手の夏子が、だんだん生きづらそうなのがわかってきて心配になる。その夏子の体にフォーカスして、物語は終わりを迎える。これは解消されない心と体、社会との齟齬を暗示するものだと思う。二つ目の話も生きづらそうな女性。このひとの名前は最後までないが、名前の有無は川上氏の小説で何か意味があるのだろうか。表題作の人物がもっていた名前がないだけ、この女性の存在は無価値で、儚く、悲しいものに感じられる。現代女性の普遍的な不安を描こうとしているように見えるのに(「女性」と一般化された名詞を使うことで)、個別の名前すらもたない。「名前のない」ことのこの両義性。川上氏の皮肉げなスタンスが感じられた。

 

 

 

 

 

 
珍しく社会本。こういう本もこれからどんどん読んでいきたい。タイトルの「日本再興」にちょっと右翼っぽい感じがしたのだが、そんなことはなく、すごくラディカルに日本を立て直して行く方法が書かれている。

AIやロボットが普及した未来を舞台にしたSFでは、人間が人工知能に支配されたディストピアが度々描かれる。だが、この本では、人間の限界ーー肉体的・知的な脆弱性を、AIが優しく補強し、その可能性を拡張していく希望ある未来があった。

日本の歴史を概観し、生活や感覚の移り変わりをロジカルに述べていて刺激的。「こういう価値観は日本人に合わない」「そもそもこういう感覚は日本にはなかった」というふうに、現代日本の「生きづらさ」を分析している。昭和や欧米(落合氏によると本来「欧米」という概念は間違いらしいが)の感覚が入り交じり、混乱している現在が一番辛いのかも、と楽観的に考えたくなる。日本人ageが度々あり、日本人という国民性を誇りに思っている層にも受け入れやすい内容になっていた。結構尖った意見?なのに、時代の変化を受け入れづらい年長層も尊重していると感じる。私がお婆ちゃんになる頃には、介護ロボと自動自動車が普及してたらいいな、と心から思った。

 

 

@ 『高野聖

幻想的っていうより生々しい話。文蛭ほんと気持ち悪すぎて勘弁してって思った。女も、山も、蛇も、白痴も、滝も、みんな立体的っていうか、活字の上に3Dプリンターで印刷してあるみたいに、もうありありと目に浮かんでくる。「ぬめぬめ」とか「つやつや」とか「どろどろ」とか、擬音的なモノを漢語調で伝えにくるのがすごいと思う。蛆や白痴のキモさも、天女の美しさも表現できるんです、って泉鏡花自身が言いたそう。これが代表作だというのはそういう技術的な面もあるのかな。お坊さんの語りも人情味に溢れつつ上品で、抑制されている印象がありいい感じだった。

 

@『国貞えがく』泉鏡花
これは、ある筋というより、いろんな異形が渾然と出てくるのを眺める ような話なのかな。 会話がでてからだいぶ読みやすくなった。郵便局から始まるのが何かいい。物理書によって錦絵の女たちを追い払った…というイメージもいい。本の黒い革の匂いと鼬のけものの匂いがリンクするとことか技術を感じる。尻切れ蜻蛉な終わりかたが、妖怪たちがずっと連面と進んでいく感じ(?)でおもしろい。泉鏡花は女性が出てくると一気に気合いが入るというか、「描写し尽くさずにはおらんぞ」ってモードに入る。目の細かさに執念というか変態臭さを感じる。


@『女客』

ぱっと通じた恋の話で、二人の間の空気が良かった。信頼しきっているというか。

 

 

胸から溢れてくるものがありすぎて感想が書けなかった。

『秋日子かく語りき』『庭はみどり川はブルー』『ロングロングケーキ』『水の中のティッシュペーパー』は読んだことがある。どれも清冽に覚えていた。

『山羊の羊の駱駝の』は初めて読んだ。これを最後にもってくるのはやめてほしい。ぐったりする。カモられるヒロインの無垢が愚かで美しくてもうどうしようもない。この少女を、この世界を肯定的に描くのが大島弓子さんだよなあ〜〜〜〜〜と、身構えはするんだけど、すごく寂しくて切なくて頭が痛くなる。

 

 買った本

 

うーん。勉強になる人はなるのかなあ。ざっと読んだけど、単に著者の好みの本を語ってみた、という感じがした。 芥川賞直木賞を獲るための実践的な記述(たとえば芥川賞受賞作品を分析するとか)はない。「より良い小説を書くための」くらいの題名のほうがいい。

 

 

2ch創設者ひろゆきさんの新刊。この人の頭の中はいろんな意味ですごいですね。ずる賢いっていうかあくどいっていうか。。邪道だけど要領がいい人ってこういう感じなのかな。蛇の道は蛇って感じがすごくする。真面目に考えちゃうゆえにコミュ障になる人は(私含め)目から鱗でおすすめだと思う。働き方完全無双も読みたい。

 

 

 まだ読んでない本二冊