にしのひがしの

小説家志望の24歳女が本の感想を書いてゆくブログ。

映画『脳内ポイズンベリー』(2015) 感想

※どの記事もそうなんですががっつりネタバレしてます。

 

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原作未読の感想になります。作者水城せとなというのはクレジットで知って納得しました。恋人候補を天秤にかけて片方を選んだのに、うまくいかなくて別れるっていう、夢みたいなシチュエーションからの現実を描いているところが水城せとならしかった。恋愛に沼ってる人はこれ見たらいいと思う。

映画の随所にツッコミどころがたくさんあって面白かった。なんだろう、いろんなところのチープさやほころびが かえって明るい雰囲気を醸し出してた。そもそも脳内の城?のようなところで五人(正確には六人)の人格担当?がいてわーきゃー会議やってるっていう限りなくメルヘンというかファンタジーふうな設定なので。全体的に少しふわふわな感じでした。
脳内会議の結果、いちこ(ヒロイン)の言動が意味不明になってる(特に序盤)のとか面白いです。ほとんど会話成立してないし。合コンで会ったけど全然話さなかった男の子をたまたま駅のホームで見つける。掃除するって部屋に押し掛けてきて「やっぱり帰りたくない!」っていってワンナイトしちゃった翌朝、寝ているうちに逃げ帰る。そんないちこと、それでも付き合うって決める早乙女くんがよくわからない。早乙女くん合コンで野菜すべてよけて食べてるし、そもそも色々と生態が謎なんですよね。そんな男に「サオトメ!スキ!!」になっちゃうヒロインもよくわからないけど……まあ、ちょっと変わった男の子が好きなのかなあ。納得できるような具体的なポイントはあんまり示されていない。個人的には32歳で青文字系、どこでも赤いニット帽をかぶってるファッションはだいぶ勇気いるなあと思った。いちこがデビューする小説の、携帯小説に毛が生えたようなゆるふわ加減も突っ込める。しかもそれがトントン売れて、映画化までされるというんだからすごいです。そこは結構ドリーム的かも。
その反面、実際描かれてる恋愛っていうのはゆるふわあまあまじゃない。苦いものもたくさん入っていて、対極の要素が絶妙なバランスで成り立ってる作品と言えます。

 話の中心となるのは、いちこの脳内で延々と会議(というか言い合い?喧嘩?)を繰り広げる5人。議長吉田、ネガティブ担当小池、ポジティブ担当石橋、トキメキ(かな?)担当ハトコ、書記係岸。中間管理職の苦悩を背負う西島敏幸とポジティブ担当の神木くんかっこよかった!神木くん演技うまいな~~全力でいいヤツ!で、無理してない自然さで好きだった。ネガティブ思考担当の小池(吉田羊)はちょっと気強すぎて個人的にはイライラしてしまった。わりとヒステリックになるし、的外れな意見でも威圧的に押し通そうとするし。でもある意味正鵠を得ているとも思った。ネガティブ思考ってさも正しいように思えてくるし、なかなか払拭できないし。それに、そもそもとしていちこの性格の本質は「小池」なんだと思う。それが反映されているために、小池は強気でガンガン行くタイプになってるのかもしれないですね。

 

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いちおう正ヒーロー(というのか?)である早乙女くんのクソ男っぷりがまあすごい。
こいつ別れを決めたいちこが家を出てってもなおも追いすがってくる……反省してないくせに……普段ぬぼーっとしてるのにセックスに持ち込むときと追いかけてくるときだけ素早い動きする……。なんとなく爬虫類的なイメージ。若さゆえではあるんだろうけど、ゲームするからってデート断るし、彼女(いちこ)の成功を祝えず嫉妬するし、すぐ浮気を疑うし、物に当たるし、元カノとちゃんと別れてないし、人妻と不倫して家庭崩壊させた前科があるし。ただそんな早乙女くんにはどうも女性を引き付ける独特の魅力がある。過去彼と女性関係でライバルになり、何度か女をとられてしまったという因縁があるのが、いちこの編集担当である越智さん。
この人はまあ出てきた時点でかませだろうなっていうのは分かる。少女漫画的な「きゃ~どっち選ぶんだろ?ドキドキ~!!」っていうのは皆無かな。一応惜しいとこまではいくんだけど。越智さんが告白しに来るのと、自然消滅寸前だった早乙女くんからの「また会いたい」というメール受信がかぶって、どうするいちこ!?ってなるんだけど……まあわかるよな?って感じでサクッと飛ばされてておもろかった。

そんなこんなで越智さん踏み台にしてなんとか早乙女くんと付き合ういちこ。でも早乙女自身の幼さもあり、付き合いは暗雲がたれこめるばかり。そんななか、いちこの小説の映画化記念パーティで越智さんと早乙女くんがたまたま鉢合わせ喧嘩に。ここで終始大人の態度を貫いてきた越智さんが豹変して、「馬鹿にしてんじゃねーよ!!」といちこを怒鳴り付ける。この怒りはもっともだと思った。その後ついに早乙女とはもう付き合えないと悟ったいちこは別れを告げて家を飛びだす。前述のとおり早乙女は追ってくるんだけど、いちこのほうから「振り向いちゃダメだ」と突き放す。大筋だとこういうお話です。

 最後の場面、賛否両論あるようですけど自分はよかったです。いちこがまた偶然誰かと出会って、学習しない性懲りもない恋が始まって、踊るばかりの議会が幕をあける、という。

見る人によっては内容のない話だなと思えるかもしれない。あんなに頭のなかでわーきゃーぎゃーぎゃーやりあって、ののしりあって、でも結局のところいい選択ではなかったというところ。でも私はそこが逆にいいなと思ったし、終着点の見つからない人生の姿だとも思った。

欠陥だらけのいちこ、くずな早乙女、真面目に生きてるはずなのに、いつもそんな早乙女に負け、いちこにまで恥をかかされる越智さん。この作品のキャラクターたちは必死に自分を守ろうとしている。自分の何を、とさらに具体的に言うと、たぶん「プライド」を。ちょっと珍しいような気がする、恋愛漫画で自分のプライドを守るっていうテーマが出てくるのって。
いちこは自分のプライドを守るためにずっと試行錯誤してたし(ネガティブ担当であるコイケの言動に顕著)、結局その自分自身のために早乙女と別れた(「あなたのことは好きだけど、あなたといる自分が嫌い」)。
早乙女は、自分のクリエイターとしてのプライドのせいで、最後までいちこの成功を祝福できなかった。
越智さんは、自分のプライドをいちこと早乙女に傷つけられたから、大人の態度をかなぐり捨ててあんなにも激怒した。

いちこの人生は暗黒栞だらけだ(った)し、たぶん早乙女にも越智さんにも、今回の恋愛は暗黒栞として残ったんじゃないか。私にも暗黒栞は無数にある。だからといって、そうそう首を吊るわけにもいかない。脳内のポイズンたち(?)があんなにもふんじばって、西島秀俊が眼鏡割って、吉田羊と神木隆之介が言い争って、ひよりちゃんが空を飛んで、浅野和之永遠に記録し続けている。みんな自分を守って少しでもいい結論を出せるようにやってることで、それはやそんな自分を自分で否定するわけにはいかない。映画を見て私はそういうふうに思えました。

あとは……あの、会議を強制終了させるボンテージ姿の女王様はなんだったんだろう。あんまりはっきり示されてなかったよね。最初は「本能」みたいなものなのかなと思ったんだけど、ラストのとこであまり良いものではない扱いをされている。(会議メンバーに「もうあなたは要りません」みたいなことを言われる。)「本能」だったらそこまで悪くはないものだよね。会議をしているメンバーが理性や記憶を司るものだとして、彼らを無理やり気絶させてしまえるものってなんなんだろう? えええーーいもういいやーーーヤケクソだーーーってときにでてくるものなのか。暴走? 彼女が何者なのかは、多分あえて、映画のなかではボカされていました。

いちこのお部屋が半端なくおしゃれで憧れしかない。あの執筆環境は切実に羨ましい。ほしい。もうちょっと幼い感じの部屋のほうがいちこっぽさがある気もしたけどね。
あと、クレジットがひと工夫あってかわいらしかった。眼鏡だったり、パタパタ~って飛んでったり、そこは少女漫画って感じがありました。ヒロインの名前「いちこ」と題名の「ベリー」は多分かかってるんだろうなあ。 

今の彼氏とどうしても先が見えない、別れたほうがいいってなんとなくわかってるけど、踏み切れない、という女性には特に響く内容なんじゃないかなって思います。ガワはわりとあまくてふわふわなんだけど、芯の部分は恋愛の厳しさが描かれていて…そこのギャップは結構ある作品でした。主演に真木よう子さんっていうのもそれを加味してのキャスティングだったのかもしれないなあ。

お読みいただきありがとうございました!