にしのひがしの

小説家志望の24歳女が本の感想を書いてゆくブログ。

卯月妙子『実録企画モノ』『人間仮免中』『人間仮免中つづき』

今回も文学作品でなくコミックエッセイの感想です。卯月妙子という漫画家の性質上、統合失調症やアダルト業界について触れているので、苦手な方はご注意ください。

 

『実録企画モノ』

あっけらかんと書いてるので感覚が狂う。
ぶち抜け方が常軌を逸している。トラウマとかメンヘラとかいう話ではない。 本作の卯月さんの状態を軽くまとめてみると、次のようになる。

小学5年生で統合失調症発症。中学3年で自殺未遂。大学時実母が死亡、父親が再婚し、グレる。20歳で結婚、一児の母に。夫は汚物恐怖症(精神障害)があり、仕事は詐欺紛いの企画業。卯月さんの収入に頼る自転車操業
→結婚まもなく夫の立ち上げた会社倒産。21歳でSM系グロAV出演(卯当時同性と不倫)
→借金がかさみ夫飛び降り、自殺失敗からの植物人間化→一年半後死亡

これを終始ギャグ調で書けるのは何故?????
自殺の際のやりとりもまたネジが外れている。卯「オイラの体はもう限度ワク超えちまった!!/お父さん、アンタはもうスデに人生の限度ワク超えてやりたい放題やり尽くした!/頼むから死んでくれ!」→夫「逝ってきまーす!」→横着して向かいのビルから飛び降りる
この人は頭が良いんだと思う、口から出る言葉が肚が座っていて、どこか達観したところがある。すっぱり自分や人生を割り切っていて、「漢」を感じるところすらある。
この人みてると「自分を大切に」とか全然意味ないというか、そういうなまっちょろい感覚が全然ないように感じる。自分を捨てているという気が凄くする。もうAVの企画物がやれるとこまでやりきっちゃって、自分で考え出したアイディアが「ミミズおいしー♥️」じゃないよ。タガが外れているというか、ないというか。自暴自棄なのかなと思うとそうでもなく、「やりたいことをやってる」っていう感覚なのがよくわからない。いや、本当にそういうことをしたいのかもしれないけど。そこまで人生のアクセル踏み切れちゃうのが、なんか、頭の中身が違うんだなあと思う。悲惨過ぎる経験をこんなノリの下ネタ満載の漫画として描いているのも、ギャグならギャグに振り切って書く!という卯月さんなりの根性だったのだろうか。筋を通し過ぎて、かえって自分を苦しめてしまう人だという感じもした。


人間仮免中

 

人間仮免中つづき』
 
こういう人生を駆け抜けてきた人から出る「人生って最高だ」「生きてるだけで幸せだ」というメッセージは、その深みを完全に理解することまでは出来ないけれども、しかし胸に迫る。ぜひ年末に読んでみてください。ちょっと重いかもしれないけれど。

『カルト宗教信じてました』感想メモ

 

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読みました。エホバの証人信者の母親のもとに生まれた女性の、体験告白コミックです。いろいろ考えたことをつらつらとのせていきます。

幸福とか、あるべき生き方とかって答えのないものだから、はまりそうになるのはわかる
でも、エホバは答えのない問に一人で向き合えないひとたちが、独特な決まりをつくって集団を形成している感じがする
このシステムがながいあいだ受け継がれてきているってことは、そこに人間の本能的なものがあるんだろうな
すごくあやうい
こうしていれば幸せ(になれる)と言う共同幻想をつくっているようにみえる

 

アマゾンレビューには同じくエホバに疑問を持ち、脱退した元信者の方の感想も書かれていた。
このひとたちはほんとうに世界の終わりや破滅というものと真っ向から向き合ったのだ、取っ組み合い、抜け出したのだ
そこには非信者のひとが思い付きもしないような深い経験、感情があったのだろう

エホバ問わずカルト宗教への入信のきっかけが、元々の潜在的な弱さや不安である(二世や身近な人が信者だった場合はまた違う圧力がかかってくるが)、というプロセスを考えれば、離脱者が体験することは、奇跡のような心理的脱出、精神的解脱(?)といっていいのではないだろうか
世界の終わりという途方もないものと向き合い、未知の世界に出ていくということ。

 

人間を「ある状態」にしたてあげるやり方というのは、似通ってる
「ある状態」ーー特定の対象に依存・没頭させ、思い通りの言動をとるように強制していくこと。その結果、自由意思が曖昧となり、依存対象以外のものと孤立を深めて更に抜け出せない状態になること。
離脱・回復の過程もそれらと変わるところはない。
ただ、今回のカルト宗教だと、使われる言葉、概念が「神」や「世界の終わり」というスケールの大きいものであるため、より劇的な効果が生まれていると思う。ひとつの作品としても感動的だ。

 

 

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しかしエホバの排他性が露骨すぎて。。もし何か疑問を覚えたら「自分で考えるのはだめで(理由は人間は不完全だから)」、出版物を当たるか、祈るか、長老的な人に聞くか、のどれかだなんて。人間が不完全なら、当然その出版物を書いた人も長老も不完全な存在なのに。おかしい。
そもそも自分で考えることを放棄させる宗教なんて変だ。禅なんかは十牛図なんかにある通りとことん馬鹿みたいに自分で延々と考えさせて、悟りまで自分を深めていくものなのに。ただ、もし信者にそう言っても、そのひとたちは「禅や仏教がおかしい(≒サタン)と思うんだろうけど。絶対物は絶対なの、だって絶対物だから。これだけのなんの理論でもない理論。

上から思考停止を促してくるものに正しいものなんてひとつもない。「集団」「決まり」という「思考が通用しないもの」を作り、思考停止させていく、絶対視させていく、というのはとても古典的かつ普遍的なやり方だ。苦しみや辛さはがっぷり四つみたいな感じで直視していかなきゃどうしようもない。自分の内側で蛇みたいになってく。
ネットが普及する前は「偉い人に聞いたりエホバ関連本を読んでね!」で成立してたのかもしれないけど。今は一瞬で検索できるし、もうそんなこと言ってられないと思うんだけどな。

「救い」をちらつかせ、判断力や自由意思、人生の楽しみ、ときには子供の命すら奪いながら、信者からお金を巻き上げて生き血を吸う。 なんて効率的で非道なシステムだろう。忘れてはいけないのは、洗脳というファクターを通せば、それが充分に可能であるという点だ。洗脳は、人間を自動ATMにも、奴隷にも、傀儡にもしてしまえる力がある。しかも宗教なら無税!そりゃ上の人たちからしてみたらウハウハだよね。

 

エホバが最初から腐ったカルトだったといいはしない。もしかしたら最初は少数の信者がひっそりと集まって、純粋にお互いを高めあっていたのかもしれない。組織が肥大化するにつれ、いろんな部分が変質し、破綻し、結果的に洗脳+集金機関になってしまったのではないだろうか。教祖がロレックスをつけて豪遊するような…。


たぶんエホバの信者は、みんな心が弱いか、頭が悪い。あとは、すごく流されやすい。もともとそうでなくとも、宗教活動に参加するにつれて心や頭の機能が奪い去られているのではないか。作者の母親が輸血に超反対したのに、輸血して完治した孫と嬉しそうに遊ぶとかダブスタがひどすぎてイラつく。結局自分の都合がいい方に流されてるだけじゃん、と思ってしまう。二世の人は親や周囲の圧力などほんとうに大変な人生を歩んでいると思う。

 

狡いところは「死後」というのを隠れ蓑にしてごまかしていること。多くの宗教で死後は出てくるけど…そもそも現世をより良く生きるために死後という一種の方便が使われるのであって、死後のための現世ではない。エホバの証人はそこが転倒している。エホバの協議を信じて信じて信じぬいて一生過ごして死んで、どうなったかなんて誰もわからない。答え合わせの答えがない。死人に口なし。信仰心を利用しようとする人にとってはこれほど都合のいいことはない。「ハルマゲドン」とかいって初手脅しから入ってるとこも好きになれない。

 

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エホバの証人貧困ビジネスに近いものがある、と書いていたのも興味深かった。

信者たちが社会制度に弱いというのも無知を象徴している。宗教活動に打ちこみ貯金をせず、結局生活保護を受給する、というのはあまりにちぐはぐな結論だ。信者に宗教活動中心の生活を強制する以上、教団が信者の面倒を見るべきだし、そうしなければ筋が通らない。社会制度に「寄生」するだけの宗教ということになってしまう。エホバ信者は宗教外の世界、勤労者や非信者を見下しながら、そのひとたちの税金によって生きているというねじれた状態が生じている。
「外の世界は恐ろしいから触れないように」育て、無知でいさせるというのは真の愛ではない。それが恐ろしく汚らわしいものであればあるほど、外の世界に対して知識を蓄え、それと戦って行ける強さを身につけさせる必要がある。作者が三十代半ばで信仰をやめるとき、「これからどうやって生きていくの!?」と葛藤するシーンがある。そこで作者の想像する「外の世界の人のイメージ」が、「北斗の拳かよ」と突っ込まれている。この作者の怖がりようは、まるでずっとお城のなかで生きていたお姫様みたいだ。「外の世界は怖い人だらけだよ」「あなたは誰か強い人に守られて、私達と一緒にいないといけないよ」は、子供を支配しようとする親にありがちな洗脳だけれど、まるで一緒のことが行われている。

 

全体的に視点がフラットで読みやすい。絵を描くのが好きなおとなしい女の子というキャラで入り込みやすかった。それだけにサラッと出てくるエホバ用語?が生々しかったりするのだが、それもまた味。すごく常識的な感覚で生きてる人に見えるだけに、エホバの悪質さが目立つ。それでも旦那さんと出会えてよかった。旦那さんはエホバなしでも生きていける感じなのに、何故エホバを信じていたのだろう。そのへんも含めて、また本を描いてくれると嬉しいな。

 

 

最近買った本とか読んだ本とか

 読んだ本

 

 

多分初川上未映子作品。 卵の白身のようにぬめって延びてゆく文章。 下品だったり、およそ知的とはいえない会話そのままの言葉づかいを敢えて多用している。生の言葉であるがゆえに、どことなく切迫した感情があり、感覚的に響いてくるものがある。身体と心と社会、三者の間にひろがる埋まらない欠落。生きる上で歴然とあるのに、無いものとされている醜さについて、という主題だろうか。緑子の母を思う気持ちが一途で胸に刺さる。あまり表立たない語り手の夏子が、だんだん生きづらそうなのがわかってきて心配になる。その夏子の体にフォーカスして、物語は終わりを迎える。これは解消されない心と体、社会との齟齬を暗示するものだと思う。二つ目の話も生きづらそうな女性。このひとの名前は最後までないが、名前の有無は川上氏の小説で何か意味があるのだろうか。表題作の人物がもっていた名前がないだけ、この女性の存在は無価値で、儚く、悲しいものに感じられる。現代女性の普遍的な不安を描こうとしているように見えるのに(「女性」と一般化された名詞を使うことで)、個別の名前すらもたない。「名前のない」ことのこの両義性。川上氏の皮肉げなスタンスが感じられた。

 

 

 

 

 

 
珍しく社会本。こういう本もこれからどんどん読んでいきたい。タイトルの「日本再興」にちょっと右翼っぽい感じがしたのだが、そんなことはなく、すごくラディカルに日本を立て直して行く方法が書かれている。

AIやロボットが普及した未来を舞台にしたSFでは、人間が人工知能に支配されたディストピアが度々描かれる。だが、この本では、人間の限界ーー肉体的・知的な脆弱性を、AIが優しく補強し、その可能性を拡張していく希望ある未来があった。

日本の歴史を概観し、生活や感覚の移り変わりをロジカルに述べていて刺激的。「こういう価値観は日本人に合わない」「そもそもこういう感覚は日本にはなかった」というふうに、現代日本の「生きづらさ」を分析している。昭和や欧米(落合氏によると本来「欧米」という概念は間違いらしいが)の感覚が入り交じり、混乱している現在が一番辛いのかも、と楽観的に考えたくなる。日本人ageが度々あり、日本人という国民性を誇りに思っている層にも受け入れやすい内容になっていた。結構尖った意見?なのに、時代の変化を受け入れづらい年長層も尊重していると感じる。私がお婆ちゃんになる頃には、介護ロボと自動自動車が普及してたらいいな、と心から思った。

 

 

@ 『高野聖

幻想的っていうより生々しい話。文蛭ほんと気持ち悪すぎて勘弁してって思った。女も、山も、蛇も、白痴も、滝も、みんな立体的っていうか、活字の上に3Dプリンターで印刷してあるみたいに、もうありありと目に浮かんでくる。「ぬめぬめ」とか「つやつや」とか「どろどろ」とか、擬音的なモノを漢語調で伝えにくるのがすごいと思う。蛆や白痴のキモさも、天女の美しさも表現できるんです、って泉鏡花自身が言いたそう。これが代表作だというのはそういう技術的な面もあるのかな。お坊さんの語りも人情味に溢れつつ上品で、抑制されている印象がありいい感じだった。

 

@『国貞えがく』泉鏡花
これは、ある筋というより、いろんな異形が渾然と出てくるのを眺める ような話なのかな。 会話がでてからだいぶ読みやすくなった。郵便局から始まるのが何かいい。物理書によって錦絵の女たちを追い払った…というイメージもいい。本の黒い革の匂いと鼬のけものの匂いがリンクするとことか技術を感じる。尻切れ蜻蛉な終わりかたが、妖怪たちがずっと連面と進んでいく感じ(?)でおもしろい。泉鏡花は女性が出てくると一気に気合いが入るというか、「描写し尽くさずにはおらんぞ」ってモードに入る。目の細かさに執念というか変態臭さを感じる。


@『女客』

ぱっと通じた恋の話で、二人の間の空気が良かった。信頼しきっているというか。

 

 

胸から溢れてくるものがありすぎて感想が書けなかった。

『秋日子かく語りき』『庭はみどり川はブルー』『ロングロングケーキ』『水の中のティッシュペーパー』は読んだことがある。どれも清冽に覚えていた。

『山羊の羊の駱駝の』は初めて読んだ。これを最後にもってくるのはやめてほしい。ぐったりする。カモられるヒロインの無垢が愚かで美しくてもうどうしようもない。この少女を、この世界を肯定的に描くのが大島弓子さんだよなあ〜〜〜〜〜と、身構えはするんだけど、すごく寂しくて切なくて頭が痛くなる。

 

 買った本

 

うーん。勉強になる人はなるのかなあ。ざっと読んだけど、単に著者の好みの本を語ってみた、という感じがした。 芥川賞直木賞を獲るための実践的な記述(たとえば芥川賞受賞作品を分析するとか)はない。「より良い小説を書くための」くらいの題名のほうがいい。

 

 

2ch創設者ひろゆきさんの新刊。この人の頭の中はいろんな意味ですごいですね。ずる賢いっていうかあくどいっていうか。。邪道だけど要領がいい人ってこういう感じなのかな。蛇の道は蛇って感じがすごくする。真面目に考えちゃうゆえにコミュ障になる人は(私含め)目から鱗でおすすめだと思う。働き方完全無双も読みたい。

 

 

 まだ読んでない本二冊

おんなのこきらい(2014)

 

 

 

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意外とよかったー
すごく性格が悪い女の子のはなしです。女の子のどろどろな映画みたい気持ちになって。主人公の子がだいぶ苦手なタイプで最初はウッ…てなった。でもちゃんと痛い目見ていて、中盤からは共感できるところも出て来て楽しめました。
主人公キリコは、自分の可愛さを武器に生きていて、男の人なんかすぐに落とせるし、人生それでいいって思ってる。マカロンやケーキといった可愛い食べ物を大量摂取して吐くっていう、いわゆる摂食障害で、病的に「可愛い自分」に囚われている。

 キリコがこんな性格になったのは、可愛い可愛い言われてちやほやされちゃうからだと思う。街を歩けば即ナンパされてるみたいだし。「女の子なんてかわいくなきゃ誰も見てくれない」って発言して、同僚の女性に呆れられても気にしない。女の子はかわいくなきゃ〜っていうのは、実際世の中がそう思っているというよりは、キリコが自分自身を見くびっているから出る言葉だと思う。私の中身を気にする人なんかいないの、っていう。そう考えると、キリコの顔だけ見てちやほやして適当に付き合ったりしちゃう男の人たちが一番罪深い、ともいえる。 

 

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そんなキリコが仕事先で出会ったコウタに「そんな顔してて疲れませんか」とかいろいろと厳しいことを言われる。それからキリコが何回か押しかけて、だんだん仲良くなる。ここは、ちょっと、キリコが結局は女の武器を使ってコウタをなんだかんだ懐柔?籠絡?していく感じにも見えてもやっとしました。でもここでキリコはともかく、初めてそのままの自分を見せられる男の人と仲良くなれた。
話が面白くなるのはこのへんから。キリコはバーのマスターが好きなんだけどセフレ状態だった。そんな中新しく入ったバイトのサヤカに彼をとられそうになる。だけどその子もメンヘラで、いろんな男と寝ていた。清楚系のキリコとは違う、活発で親しみやすいタイプ。メンヘラビッチVSメンヘラビッチってなかなか新しくないですか?? よかった。このへんからだんだんキリコの素が見えてくる。失恋して髪を切ってからはすごくいい! ショートカット、ゆるふわロングより全然似合うよ。

印象に残ったセリフ

・「かわいいっていうか、かわいそう」
キリコが考案したアクセサリーに対してのコウタの言葉。アクセサリーに対してのようで、キリコ自身への意見にもなっている。可愛く見せることしか考えないなんて、かわいそう。

・「そのままの自分を見せてなくなるものなんて、最初からないんだよ」
これもコウタの言葉。さらっと言ってるんだけどいいセリフ。キリコは「可愛い自分」…「可愛い表情」「可愛い仕草」「可愛い言い方」で、自分を飾っている。でも「可愛い」を、たとえば「頑張ってる」とか「弱い」とか、なんでもいいけど、ちがう言葉に入れ替えると、少なからずみんなやってることになる気がする。「最初からない」って、そんなふうに諦められたらいいよね。

 

・「あなたが好きなの。あなたに好かれるなら、世界中の他の人に嫌われてもいいの」
キリコがバーのマスターに言ったセリフ。使われがちな言葉だけど、これって裏を返すと「あなたに嫌われたらもう他に何も無い」っていう、あやうい意味だなあと。キリコの言い方を聞いて気づいた。

 

・「好きでもない女の子に可愛いなんて言わないでよ」

ニュアンスこんな感じ。これはすごく普通にそうだなって思った。それで、ずっとキリコのことを可愛いさばっかり追って…って思ってたのに、どうせなら可愛いって言われたいし、可愛いって言われたら期待するなって思った。だとしたら別に、キリコのやっていたことは、発展系であって、ある意味では筋が通っている。

 

キリコ役の女優さんが可愛くないみたいなレビューが結構ありました。確かに設定みたいな絶世の可愛いではないけど、泣きの演技がすごく上手くて。最後まで見て、この女優さんでよかったと思いました。「清楚系メンヘラ」感も絶妙だった。服の振り幅が面白かった。
個人的には、ああいうオチでよかった。

 

キリコは「私にはカワイイしかない」「何にも無い」って思う。そういうときに「キリコちゃんには何があるの?」って聞かれる。自分が唯一持ってると思い込んでるモノ。それを無くすっていうのは、怖い。仕事しかない、お金しかない、なんでもいい。それを削ぎ落としたら何もない。キリコは映画の最後に、ナンパ男に「君カワイイね」って言われて「はい!」って答える。答えてるけど、それ以外何もないってことに向き合ってから、回収した「それ」は、以前の縋るもの、執われるものから、自分の基盤のようなものになってるのかもしれない。そういう体験をしたキリコは、単に恋が実るより、確実に成長していた。


音楽もポップポップで、歌詞にちょっととげがあって、映画と合ってました。ふぇのたすさん。。
素のキリコは、変にウジウジしたり群れたりしないのが見ていて気持ちよかった。本当のところは結構失礼で、飾らない、言うことは言う性格なんだと思う。

 

 

「小説とは何か」を具体的に考えるための25の質問

 

www.kikikomi.info

こちらの記事で公開されていた「小説とは何か」を具体的に考える25の質問、に自分なりに答えてみました。

内容は以下のとおりです。

 

1 「小説とは何か?」を考えることで、あたなの身に何が起きると思うか。
2 文字だけで構成されている世界が持つ意味ってなんだろう?
3 フィクションと嘘の違いってなんだろう?
4 他の表現法と比べて、小説の優れた点はどこだろう?
5 他の表現法と比べて、小説の劣った点はどこだろう?
6 面白い小説とはどんなものか。
7 小説は読者のどんな感覚をもっとも強く刺激するだろうか。
8 小説は世界に必要だろうか?
9 小説はどんな人を救うだろうか?
10 小説が世界に必要ではなく、人を救う力もないとして、それでも小説を書く理由は?
11 小説と音楽の接点は?また、小説と絵の接点は?(スポーツ、お笑い、恋愛、写真なんでも可)
12 50年後、小説はどうなっていると思う?
13 小説を書く(読む)最高のシチュエーションはどんなものだろうか。詳細に。
14 小説(文学)が禁止されている世界、あなたはどう感じる?どうする?翻って、今現在世の中で禁止されているもののことを考えてもその態度は変わらないだろうか。
15 小説が持つ、ストーリー以外の嘘にはどんなものがあるだろう。
16 小説内の挿絵の効果と弊害について
17 詳細に描写されたAという人物のイメージが読者により異なる不思議について
18 眠るときに見る夢は、小説のアイディアになるだろうか。
19 小説と現実の共通点は?
20 小説を書く(読む)力と、現実の経験値は比例するだろうか。
21 小説家の役割とはなんだろうか。
22 小説が満たしていなければならない条件はあるだろうか。
23 20か国語扱えるとしたら、どの言語で書く?(読む?)それはどうして?
24 小説を書く(読む)上での、あたなのガソリンはなんですか?
25 これらの質問に答えるうちに、自分の中に見つけた矛盾はある?

 

解答

1 「小説とは何か?」を考えることで、あなたの身に何が起きると思うか。


うーん。漠然としかいえないけど、小説を書いたり、読んだりするうえでの、何らかの評価基準が新たに加わるのではないか。というか、それを期待して答えてみる。自分の中での「いい小説」の輪郭線がハッキリするというか。

 

2 文字だけで構成されている世界が持つ意味ってなんだろう?


意味…じゃあ、絵だけで構成されている世界、音だけで構成されている世界、もしくは、映像と音と匂いと味と触覚で構成されている世界に意味はあるのか? 全然ないか、もしくはどれも同じ意味をもつのじゃないだろうか。

3 フィクションと嘘の違いってなんだろう?


フィクション→人が中に棲めるもの。心を動かされるものは多分みんなフィクション。創作物。
嘘→表面的、その場しのぎ、会話の上だけ。捏造。
上の定義を超えるような嘘はフィクションだといえる。

 

4 他の表現法と比べて、小説の優れた点はどこだろう?


優れた点。うーん。私にとっては、表現しやすいということ。安価。コストが少ない。映画を撮ったり絵を描いたりするときには必要な物理的なモノが必要ない。時間帯も制限がない。

5 他の表現法と比べて、小説の劣った点はどこだろう?


劣る。そもそも比べるものではないような気もしつつ、考えてみる。
完全に自給自足ということ。あと、パクリとかがわかりづらい。
ぱっと見て評価したり感動したりできないということ。それゆえ、基本的に限られた人向けの閉じたメディアともいえるかも。

6 面白い小説とはどんなものか。


人それぞれではある。私にとっては、奥深いもの、変わった角度から世界が読めるもの。
優れた小説と面白い小説はちょっと違うかもしれない。

 

7 小説は読者のどんな感覚をもっとも強く刺激するだろうか。


どんな感覚。五感ということ? 違うな。もっと奥深い、哲学のようなものを刺激すると思う。もっとも強くというなら。

8 小説は世界に必要だろうか?


うん。世界はわからないけど、まあ、私には必要かな。

 

9 小説はどんな人を救うだろうか?


弱い人。悲しい人。暇な人。頭がいい人?
(この設問は「小説はどんな人に読まれるだろうか」ではなく、「どんな人を救うだろうか」である。だから、「小説によって救われる人はどんな人か」というふうに考えた)

 

10 小説が世界に必要ではなく、人を救う力もないとして、それでも小説を書く理由は?


うーん。。自己満足。でも、自己満足としたって自分を救うために書いてるのかもね。本当に小説を書いても自分も含めて誰も救われないなら、小説は書かかれないんじゃないかな。書いたとしても、賞がつくられたり活計がたつほど社会的に評価はされない。

 

11 小説と音楽の接点は?また、小説と絵の接点は?(スポーツ、お笑い、恋愛、写真なんでも可)


音楽→読み取り方?のようなもの。心地よい和音・心地よい文章の組み合わせとか。
絵→ストーリー性という点では接点があるかも。音楽にもストーリー性はあるか。ストーリー性でスポーツも恋愛もお笑いも写真も接点としてくくれる気がしてきた。

 

12 50年後、小説はどうなっていると思う?


普通にある。ベストセラーとか文学賞がどうなってるかは知らないけど。でも本質的な小説は絶対に生まれ続けている。

 

13 小説を書く(読む)最高のシチュエーションはどんなものだろうか。詳細に。


書く→静かな図書館や室内で、逆光が反射しない窓際で。小雨とか薄曇りでもいいな。お腹はちょっと空いてて、手とキーボードがくっついて離れないみたいに文章が出てくる。自分と小説世界がリンクして、救済が染み渡る。飲み物はあってもなくてもいい。誰にも見られて居ないし、誰もお喋りをしていない。他の人は静かにうたたねしてるのがいいかな。
読む→書斎で自分にちょうどの椅子と机で。ちょっと狭いくらいがいい。
それか、空いてる電車や新幹線に乗っている。最近気付いたけど結構これも集中できる。ちらっと目をあげると窓の外とか、ほかの人が見えるのがいいね。

 

14 小説(文学)が禁止されている世界、あなたはどう感じる?どうする?翻って、今現在世の中で禁止されているもののことを考えてもその態度は変わらないだろうか。


うーん。誰も楽になれないんじゃないか。それは言い過ぎか。でも、結構な割合の人が楽になれない、のでは。でも禁止されてなくても全然本は読まない、ネットとテレビしか見ないって人ざらにいるしな。
本を読んでた人は、禁止されても今まで集めた本を隠し持ってこっそり読むんじゃないかな。私もそうする。麻薬みたいに規制されたり逮捕されたりするのかな…無理だなあ。

15 小説が持つ、ストーリー以外の嘘にはどんなものがあるだろう。


んん。嘘というより誇張? 誇張は嘘? 設定は嘘? 嘘というよりセットだよな。嘘と呼べるものはないんじゃない? 読んだ人が嘘と思うのか、書いた人が嘘と思うのか。よくわからない。

16 小説内の挿絵の効果と弊害について


あんま興味ない。でも萌え絵の絵本はあんまり子供に読ませたくない。
作品のイメージにあって、作者が認めたんなら基本的には口出すことではないのでは。

17 詳細に描写されたAという人物のイメージが読者により異なる不思議について


不思議なのか?読者ごとの感性じゃないか。
例えば「世話焼き」ってだけでも「頼れる」って人と、「鬱陶しい」と思う人とはいるだろうし。

 

18 眠るときに見る夢は、小説のアイディアになるだろうか。


なる。

 

19 小説と現実の共通点は?


一筋縄ではいかないところ。

 

20 小説を書く(読む)力と、現実の経験値は比例するだろうか。


現実のなんの経験値か。旅行に行った経験値?異性と付き合った経験値?仕事の経験値?
リンクする場合もまああるんじゃないかな。たとえば旅行記を旅行によく行く人が読めば、予備知識はついてるから色々と汲めることもあると思う。
小説に限った場合は、、そもそも読む力と読み取る力って違うのかな。なんかわかんなくなってきた。

 

21 小説家の役割とはなんだろうか。


役割。。。社会的責任?とか?と考えてみたけどなんか偉そう。小説を書くこと。以外にないのでは

 

22 小説が満たしていなければならない条件はあるだろうか。

満たしていなければならない。。誰か読み手のために、席をあけておくというか、読み手を包含したものを書くということじゃないかな。その読み手というのは限られたごく一人かもしれないけど、それでもそれはある程度小説じゃないか。あとは、読むに耐える文章と展開にするということ。最近のラノベとか見てると、自分の狙った層に面白い・読むに耐えるということなのかもしれない。

 

23 20か国語扱えるとしたら、どの言語で書く?(読む?)それはどうして?


ネイティブじゃないか。英語勉強してるけど、やっぱり「ネイティブの言葉から」しか究極できないなって思う。でもナボコフとか、多和田葉子さんとか、いろいろ特例はいるけどね。そもそも二か国語もできない人間に答えられないなあ。

 

24 小説を書く(読む)上での、あなたのガソリンはなんですか?


つらいこと、とか。自分浮いてるなあ現実でやってけないなあって気持ち。あとは…認めたくないけど、自己顕示欲とか承認欲求もあるんじゃないかな。

 

25 これらの質問に答えるうちに、自分の中に見つけた矛盾はある?


読み返せばあるかも。今のところはないような?

 

感想

自分は負の力で小説を書いている感じがしますね。 わりと思いついたままババッと書いたのですが、答えやすい質問が多くて、楽しかったです。懐かしの一問一答の文学バージョンみたいな感じで。自分だと結構根も葉も無い解答になってしまった部分があるのですが、他の方だとまた全然違う答えになりそうで、興味深いです。書き手さんはぜひやってみてください。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

  

読んでる本と最近してること

10/16現在の読んでる本と感想メモなど。

 

Kafka on the shore by Haruki Murakami

原作がすごく好きだったので、せっかくならボキャビルがてら英語版を読んでみようと思いついて。チャプターが短いので1日1チャプターずつ読むのにちょうどいい感じです。 現在Chapter3まで読んだ。 始まり方がとてもよくて 英語で読んでも日本語で読んでも変わらない。シンプルな文章が多いので翻訳映えするのかも。

 

子供の領分 吉行淳之介

 

本は読めないものだから心配するな 菅啓二郎

ヴィレヴァンで見つけて。朗読とかでゆっくり読んだりしてる。初めて見たけど、書店ランキング1位だたり、有名な本みたい。エイミー・ベンダーの翻訳で知りました。頭がいい人の頭がいいエッセイという感じで、こういうものを書く人でも本は読めないもの、と思ってると思うとちょっとほっとする。本って読みたいと思ってすぐ読み終われるものじゃないし、理解しようと思ってすぐ理解できるもんでもない。読書って全然一筋縄じゃいかない。

 

愛の渇き 三島由紀夫

 

図書館からミランダ・ジュライ「一番ここに似合う人」とスティーブン・ミルハウザー「ナイフ投げ師」もかりたんだけど読みきれそうにない。またいつかかな。最近和文を読みたい感じです。多和田葉子犬婿入り』がよくて、コアな日本作家をもっと読みたくなりました。

 

あと、最近は、日課で英検準一級の勉強をしています。嫌にならないように1日一時間半くらいで。でも全然進まないなあって感じる。ずっとそうなんだけど、単語とか、その成り立ちとか、意味の一つ一つまで調べたくなっちゃって、電子辞書で英和辞書もOEDもひいて、語源調べて、ノート書いて、暗記カードつくって、ってなってるとあたらしい単語4、5個で終わったりする。そんなことやってたから、学生時代毎日の単語テスト全然間に合わなくていっつも点が悪かった。今はテストがないから、心いくまでゆっくりじっくり調べられていいです。全然進まないけど、血肉になってくってこういうことなんじゃないかと信じたい。

 

今日もお疲れ様でした。 

 

 

 

 

 

kill your darling(2013) 感想

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ビートニクスを代表する作家であるアレン・ギンズバーグダニエル・ラドクリフ)と、友人ルシアン・カー(デイン・デハーン)の大学時代を描いた、実話にもとづく映画です。他にもケルアック、バロウズなどが出てきます。

ずっと見たいと思ったけど昨夜Netflixで見つけて観ました。
ちょうど「パリ・レビュー・インタビュー」のケルアックとボウルズを読んですぐに観れました。いいタイミングでした。

 

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この本、私はカポーティ目当てで買ったのですが、ケルアックとジェームズ・ボールドウィンのインタビューでルシアン・カーの名前が出てきています。収録されているインタビューもどれもとても素晴らしいので、興味を持ってる方にはとてもオススメです。

 

…でも、『ジョヴァンニの部屋』の芽はアメリカにあるのよ。デイヴィッドはぼくが考えた人物だけど、もとになったのはルシアン・カーという青年が関係した特異な事件で、かれがある人間を殺したの。かれは、ぼくの知り合いたちのあいだでは有名だったのよーーぼくは個人的には知らなかったけどね。

(ジェームズ・ボールドウィン、257)

 


『キル・ユア・ダーリン』予告編

 

 

感想

よかった~~!!
キャストと音楽と映像100点です。ビートに合わせてタイプライターうちながら麻薬でキメキメになってるシーンがまさにビートニクス!ってかんじで興奮しました。
話はちょっと駆け足しと思うとこもあったけど(2時間でもよかった)、「大学入りたての青年たちの青春映画」感があって、重い話なのに爽やかなテイストに仕上がってた。ビートニクスの詩人たちって破滅的な生き方をしてるって先入観があったんだけど、イメージが変わりました。

ルシアンが魔性の小悪魔すぎる。。バナナフィッシュのアッシュを三次元にしたみたいな色気と美。この子は大学何しに来てたんだろう。口ではすごくカッコいいこと(文学を革新する)言ってアレンやケルアックを焚きつけながら、自分は大学の宿題もできないし、裁判の口述すら人に頼むという。。その生き方を助長していたのは間違いなくデイヴィッドだったと思うけど。でも、映画に触れられているとおり、デイビッドなしでは生きていけないもろい部分、弱い部分がルシアンにはあったのだと思う。せっかくデイヴィッドと切れたのに、変わろうとせず、デイヴィッドの代わり(レポートの代筆)をアレンにまんま求める辺りけっこう未成熟な内面だったんだろうな。書くアレンもアレンだけど。でも自分でやれよ〜〜!っていうとプイッてそっぽ向いてどっか行っちゃいそうなルシアン。惚れた弱みですね。

ルシアンにとってデイヴィッドがほぼ父代わり、愛憎渦巻きながらも一蓮托生だったのだと思うと、ルシアンのデイヴィッド殺害には父殺しというテーマも感じとれる。

アレンはラドクリフ補正もあってか、苦悩続きの実直ないい奴ってかんじでした。授業でこの人の詩を読んだときはぶっとびすぎてて正直よくわからなかった(孤独のイメージはすごく強く感じたけど)んですけど、だいぶイメージが変わりました。ボートの中で読んだ詩、とてもよかった。まっすぐな愛と、純粋さがある。真っ向から愛する絶望に向かう魂を持ってる。大きすぎる黒い目と、いつもちょっと居心地悪そうにしてる感じがとても魅力的だった。くるくる変わる表情も。

そしてバロウズが一癖ある傍観者で大変好きです。この人いいキャラすぎるでしょう。パリス・レビューのインタビューで「自分には自我というものがろくにない」って言ってるんだけど、かなりそんな感じがする。でも深い部分ではすごく友達思いなんだろうなあって思う。皮肉屋で乾いて見えるけどマグマみたいな感情が奥底に眠っていそう。

ケルアックはスポーツマンでナイスガイです。この人が現れたとき、アレンはルシアンがケルアックに取られちゃうんじゃ…ってちょっとヒヤヒヤしてるんだけど、わかる。タイプとしてはちょっとヘミングウェイとだぶるかも? 雰囲気が「破天荒でダメ男だけどまあモテちゃうよね」ていう感じがあってよかった。

話は全体的に男同士の痴情のもつれ、という感じがあるのですがw、そういうの生理的に無理って人以外には観てほしいなあと思います。ビートニクスの詩人たちを好きになれる一本です。

 

蛇足

なんか、もう、映画の半分はルシアンを演じるデイン・デハーンの美と色気で構成されているような気がしてならないのですが。ほんとに美しくて気位が高くて大の男を翻弄しちゃう、儚さと魅力がある感じで。素晴らしいです。ちょっとカポーティと似ててときめきました。似てないですか?

 

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デイン・デハーン

 

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(カポーティ