にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

書籍

物理的にも精神的にも重い本

『北米探偵小説論21』という本を読んでいる。図書館で偶然見つけたのだが、圧巻の1200ページ越え・しかも二段組みという「文量」を誇る。 北米探偵小説論21 作者:野崎六助 発売日: 2020/06/20 メディア: 単行本 単著としても圧倒されるんだけども、この本の…

「しんせかい」 山下澄人

++あらすじ 19歳のスミトは間違えて配達された新聞で見つけた俳優脚本家の養成所に通うため北海道の奥地に赴く。その動機は希薄であり、芯から俳優や脚本家への夢を抱いているわけでもなく、講師の名前も知らないまま入学に至っている。そこは入学授業料…

しずけさ 町屋良平 文学界5月号

あらすじ 鬱で仕事を辞め、自宅療養中の青年・棟方と、小学校五年生の笹岡樹が深夜の久伊豆神社で出会う。樹は大麻を栽培している両親により夜の二時から六時まで家を追い出されるため、警察に捕まらないよう、毎晩神社で時間を潰していた。棟方(「かれ」)…

最近買った本とか読んだ本とか

読んだ本 乳と卵(らん) (文春文庫) posted with カエレバ 川上 未映子 文藝春秋 2010-09-03 Amazon 楽天市場 多分初川上未映子作品。 卵の白身のようにぬめって延びてゆく文章。 下品だったり、およそ知的とはいえない会話そのままの言葉づかいを敢えて多用…

2018年7月〜8月に読んだ本

7月〜8月に読んだ本で、記事を書いていなかったものをまとめました。 (案の定)長くなりましたが…。一冊あたりは短いので読んでみてください。 優しい鬼 レアード・ハント 奴隷制があった時代の、中西部(ケンタッキー州シャーロット郡…『パラダイス』)…

『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ 感想

読みました。 なんか、すごーーくモヤモヤしました。これはダンサー・イン・ザ・ダークを見た時の感想に似てる。 レビューを見るとみんな褒めてるのも似てる。 まず、ストーナーにはもっとやれることもやるべきことも、あると思った。 周囲を幸せにする努力…

読んで、訳して、語り合う。 都甲幸治対談集

読みました。おもしろかったです。 喋ってる内容は結構難しいことなんだけど、話し言葉だからするっと読めて、わかりやすいです。 作家さんとか思想家?さんの対談ならよくあるけど、翻訳者さんの視点からの対談って初めて読みました。海外文学を中心に、現…

5月の鑑賞記録

読んだ本 切破へ 井上荒野 →ブログ書き済み きみがぼくをみつける (サラ・ボーム) →五月の個人的ベスト本。表現もテーマも何から何まで好みだった。もうなにもかけない。書けないけど一番好き。直感で買ってよかった。 大家さんとぼく 矢部太郎 →受賞のニ…

井上荒野『切羽へ』感想

(2008年 第139回直木賞受賞作) 読みました。 ずっと「せっぱ」だと思って読み進めてたんだけど、「きりは」って読むんですね。切羽詰まる、の切羽ですよね。意味は同じなのかな。 解説が山田詠美さんで、昔好きだったのでそれもあって読みました。 …

『高い城の男』 P.K.ディック 感想

頑張って一週間くらいで読みました。読みましたけど。 論点というか、主眼はどこなのか混交している印象が強い。ぼやけている。 ヒトラーとかユダヤ人のことなのか、易経のことなのか、政局のことなのか、戦勝国と敗戦国間の人種的軋轢のことなのか、謎めい…

『骨を彩る』彩瀬まる 感想

読みました。 :★★★★★: 今やってるAmazon Kindleの幻冬舎文庫セールで324円で買いました。あ、でも、Kindle版は解説がない(最後まで読んで知った)というがっかりポイントがあります。。解説だけ図書館とかで読むなりでいいって方はぜひぜひ。 凄い良か…

アンナ・カヴァン『氷』感想

読了しました。 薄い本だし、訳も自然でつっかえるところもなかった。 難しいようでいて単純な話なんだろうなと思う。 こういう話を読むときに、何かと何かがイコールだとか分析して、関係図とか、一覧表を作ろうとしたがる人がいる。たとえば芥川龍之介の『…

2017見た映画・本一覧

覚えている範囲で書いていこうかと。。 映画 ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダ―ソン、米)2012 ミザリー(ロブ・ライナー、スティーブン・キング、米)1990 トゥルーマン・ショー (ピーター・ウィアー、米)1998 シャイニング(スタンリー・キュー…

ウルフ「灯台へ」感想

ご無沙汰してました、にしのです! 閲覧有難うございます。先日ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」を読み終わりました。初ウルフ作品でした。 灯台へ/サルガッソーの広い海 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-1) ヴァージニア・ウルフ,ジーン・リース 河出書房…

男と女と「楽園」としての南の島〜モーム『月と6ペンス』

5日ぶり(?)です。お久しぶりです。 この5日でバイト始めて辞めました。。時間ができたので、また今日から更新していきたいと思います。今日は七月に読み終わっていたモームの「月と6ペンス」のレビューめいたものを書いてみます。宜しくお願いします。 …

殺人を犯す青年たち〜「太陽がいっぱい」パトリシア・ハイスミス

さて、今日は「太陽がいっぱい」の主人公・美しき犯罪者にして、大胆かつ繊細な24歳の青年、トム・リプリーについて書きたいと思います。映画は見てないです。最近「キャロル」が話題になって、女性同士の恋愛って珍しいなあという感想を抱いてたくらいで…

(抄)「ハイティーン」の断片〜寺山修司「少年少女詩集」

今日は寺山修司著「書を捨てよ、町へ出よう」の中の、「ハイティーン詩集」の詩二つについて書こうかなと思います。以前読んで、すごくいいなと思ってノートに書いてたんですが、今日ふと思い出したので。私はハイティーンどころかもう24歳になってしまいま…

映画とイデオロギー〜『瓦礫の天使たち―ベンヤミンから“映画”の見果てぬ夢へ』

映画論めいたものを読みたいなと思ってたのと、表紙がクレーの絵で惹かれました。クレーが好きなので。 ちょっと自分でもどう書けばいいのかよくわからないですが、試行錯誤しながらやりたいと思います。 【章立て】 序章 喜劇の女王―“無声映画”の未完のプロ…