にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

本谷有希子『How to burden the girl』―美少女とオタクの現代民話

最近大塚英志の『サブカルチャー文学論』を読んでいた。大塚氏は大学時代民俗学を専攻し、自身の著作や批評にも民俗学的切り口が多く見られる。非常に納得させられるものがあり、氏の論考はかなり好きだ。 サブカルチャー文学論 作者:大塚 英志 発売日: 2004…

書記バートルビー

まったくの虚無状態に陥り次第に何もしなくなっていくバートルビー。そんな男と相対した人間の、戸惑い、苛立ち、同情、疑い、諦め、保身、親切心、寂寥といった心の機微が書かれる。「しない方がいいと思います」。どんな要望もそう返され、静かに無視され…

物理的にも精神的にも重い本

『北米探偵小説論21』という本を読んでいる。図書館で偶然見つけたのだが、圧巻の1200ページ越え・しかも二段組みという「文量」を誇る。 北米探偵小説論21 作者:野崎六助 発売日: 2020/06/20 メディア: 単行本 単著としても圧倒されるんだけども、この本の…

『笹の舟で海を渡る』角田光代 感想 

笹の舟で海をわたる 作者:角田 光代 発売日: 2015/03/13 メディア: Kindle版 終戦から10年、主人公・左織(さおり)は22歳の時、銀座で女に声をかけられる。風美子(ふみこ)と名乗る女は、左織と疎開先が一緒だったという。風美子は、あの時皆でいじめた女の子?…

(日本人)橘玲

生物学、歴史学、人類文化学、経済学、倫理学(平和・正義)、思想哲学(民主主義、グローバリズム)、宗教学などを綜合して、本来の日本的人間像や欧・米圏との相違性を探る。章ごとで一冊本が書けるくらいの内容を披瀝するので密度が濃く読むのにカロリー…

進撃の巨人所感&展開予想

※ 123話までを踏まえて ※情熱大陸諌山創の内容を含みます エレンがああいう結論になるのはわかる、はじめから世界への怒り、理不尽への反抗、支配への憎悪で動いていたから、世界が裏返ったところでそこの憤懣は変われない。徹底的に世界から排他され攻撃…

「しんせかい」 山下澄人

++あらすじ 19歳のスミトは間違えて配達された新聞で見つけた俳優脚本家の養成所に通うため北海道の奥地に赴く。その動機は希薄であり、芯から俳優や脚本家への夢を抱いているわけでもなく、講師の名前も知らないまま入学に至っている。そこは入学授業料…

spotify premiumをやめてYoutube premiumに入りました

題名の通りなのですが!spotify premiumとYoutube premiumで迷ってる方の参考になれば・・と思い、書いてみます。 spotifyは一年くらいプレミアム会員でした。最初は面白く使っていたのですが、私の使い方とspotifyの機能があんまり噛み合わないのか、そこま…

しずけさ 町屋良平 文学界5月号

あらすじ 鬱で仕事を辞め、自宅療養中の青年・棟方と、小学校五年生の笹岡樹が深夜の久伊豆神社で出会う。樹は大麻を栽培している両親により夜の二時から六時まで家を追い出されるため、警察に捕まらないよう、毎晩神社で時間を潰していた。棟方(「かれ」)…

邦画『恋の門』(2004)感想

みた〜〜〜すごく漫画感のある映画だった。あえてなのかなと思う。終わり方の軽さも含めて、あえてペラペラさを残している感じがした。これを軽妙ととるか軽薄ととるかは、見る人によると思う。最初は大丈夫かな?って思ってたけど、恋乃の借金発覚の下りか…

映画『脳内ポイズンベリー』(2015) 感想

※どの記事もそうなんですががっつりネタバレしてます。 原作未読の感想になります。作者水城せとなというのはクレジットで知って納得しました。恋人候補を天秤にかけて片方を選んだのに、うまくいかなくて別れるっていう、夢みたいなシチュエーションからの…

卯月妙子『実録企画モノ』『人間仮免中』『人間仮免中つづき』

今回も文学作品でなくコミックエッセイの感想です。卯月妙子という漫画家の性質上、統合失調症やアダルト業界について触れているので、苦手な方はご注意ください。 『実録企画モノ』 実録企画モノ posted with カエレバ 卯月妙子 太田出版 2013-11-01 Amazon…

『カルト宗教信じてました』感想メモ

読みました。エホバの証人信者の母親のもとに生まれた女性の、体験告白コミックです。いろいろ考えたことをつらつらとのせていきます。 幸福とか、あるべき生き方とかって答えのないものだから、はまりそうになるのはわかるでも、エホバは答えのない問に一人…

最近買った本とか読んだ本とか

読んだ本 乳と卵(らん) (文春文庫) posted with カエレバ 川上 未映子 文藝春秋 2010-09-03 Amazon 楽天市場 多分初川上未映子作品。 卵の白身のようにぬめって延びてゆく文章。 下品だったり、およそ知的とはいえない会話そのままの言葉づかいを敢えて多用…

おんなのこきらい(2014)

意外とよかったーすごく性格が悪い女の子のはなしです。女の子のどろどろな映画みたい気持ちになって。主人公の子がだいぶ苦手なタイプで最初はウッ…てなった。でもちゃんと痛い目見ていて、中盤からは共感できるところも出て来て楽しめました。主人公キリコ…

「小説とは何か」を具体的に考えるための25の質問

www.kikikomi.info こちらの記事で公開されていた「小説とは何か」を具体的に考える25の質問、に自分なりに答えてみました。 内容は以下のとおりです。 1 「小説とは何か?」を考えることで、あたなの身に何が起きると思うか。2 文字だけで構成されている世…

読んでる本と最近してること

10/16現在の読んでる本と感想メモなど。 Kafka on the shore by Haruki Murakami Kafka On The Shore (Vintage Magic) posted with カエレバ Haruki Murakami Vintage 2005-10-06 Amazon 楽天市場 原作がすごく好きだったので、せっかくならボキャビルがてら…

kill your darling(2013) 感想

ビートニクスを代表する作家であるアレン・ギンズバーグ(ダニエル・ラドクリフ)と、友人ルシアン・カー(デイン・デハーン)の大学時代を描いた、実話にもとづく映画です。他にもケルアック、バロウズなどが出てきます。 ずっと見たいと思ったけど昨夜Netf…

2018年7月〜8月に読んだ本

7月〜8月に読んだ本で、記事を書いていなかったものをまとめました。 (案の定)長くなりましたが…。一冊あたりは短いので読んでみてください。 優しい鬼 レアード・ハント 奴隷制があった時代の、中西部(ケンタッキー州シャーロット郡…『パラダイス』)…

『すばる』2017年11月号感想走り書き(第41回すばる文学賞受賞作品+佳作感想)

読みました。うーん。。どっちも微妙でした。賞ごとの傾向はあるんでしょうが、完成度においても文章のレベルにおいても『蛇沼』(新潮新人賞)『青が破れる』(文芸賞)のほうがよかったと思います。 (それぞれの感想ページはこちら↓) 山岡ミヤ『交点』第…

大江健三郎『個人的な体験』『狩猟で暮した我らの先祖』『人生の親戚』『鳥』

最近わりと大江健三郎を読んでいました。個人的な感想メモを書き留めておきたいと思います。 個人的な体験(第11回新潮文学賞受賞作) 大江健三郎の作品は彼独自の哲学や思索のシュミレーションというか、あるひとつの実験的な世界という側面が強い。こう、…

『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ 感想

読みました。 なんか、すごーーくモヤモヤしました。これはダンサー・イン・ザ・ダークを見た時の感想に似てる。 レビューを見るとみんな褒めてるのも似てる。 まず、ストーナーにはもっとやれることもやるべきことも、あると思った。 周囲を幸せにする努力…

読んで、訳して、語り合う。 都甲幸治対談集

読みました。おもしろかったです。 喋ってる内容は結構難しいことなんだけど、話し言葉だからするっと読めて、わかりやすいです。 作家さんとか思想家?さんの対談ならよくあるけど、翻訳者さんの視点からの対談って初めて読みました。海外文学を中心に、現…

町屋良平『青が破れる』〜第53回文藝賞受賞作 感想

(文藝2016 冬号誌上で読みました) 「気持ちのよい違和感」 口語と文語、漢字とひらがな、文学と会話が入り混じってくる文章が新鮮だった。所々詩のような、所々コントのような。形式張ったなにかを描こうとしていない。とことん感覚的で。あまりかっちり小…

石井遊佳『百年泥』(第49回新潮新人文学賞・第158回芥川賞受賞作)感想

(新潮2017.11月号誌上で読みました) ※ネタバレ注意 最近の芥川賞って、こういう、ちょっとべらんめい感ある女性の一人称小説が好きな気がする。絲井秋子さんとか村田沙也加さんとか。正直そこまで良い小説とは思わなかった。「わたしのインドで日本語教師…

佐藤厚志『蛇沼』(第49回新潮新人文学賞受賞作品)感想

※ネタバレ注意 (新潮2017年11月号) ドロドロした憎悪、疑念、暴力、嫌悪が沼底に溜まった泥のように渦巻いている。 主人公恭二がセイコや雷魚、祖父茂夫に向ける愛情?はちょっと意外なくらい純粋。 一枚岩なヒーローとかダークヒーローではなく、鬱…

昔みた映画のレビューをまとめてみる・上

思うところあってFilmarksから鑑賞メーターにレビューを移転します。それで、鑑賞メーターだと文字制限があって、書いたのが削れてしまうので、こちらに記録をまとめがてら、感想全文を残して置こうと思います。2年前〜ブログを始める前辺りに見たものです。…

5月の鑑賞記録

読んだ本 切破へ 井上荒野 →ブログ書き済み きみがぼくをみつける (サラ・ボーム) →五月の個人的ベスト本。表現もテーマも何から何まで好みだった。もうなにもかけない。書けないけど一番好き。直感で買ってよかった。 大家さんとぼく 矢部太郎 →受賞のニ…

女性の性についての映画〜「ノルウェイの森(2010)」感想

原作:村上春樹 監督・脚本:トラン・アン・ユン 主演:松山ケンイチ ★★★★☆ やっと観ました。レビュー見ると結構酷評多いですね。ハルキストとか、ノルウェイの森がすごく好きって人とかいて、原作とは比べものにならない、って結論が多い。コアなファンほど…

英語学習挫折した方に〜NetFlixで「リトルウィッチアカデミア」を英語字幕・英語音声で見るのはオススメという話

こんにちは、にしのです! 今回は珍しく英語の学習法についてです。備忘録の意味も込めて書いておきたいと思います。まあ、タイトルの通りなのですが、個人的にはすごく自分にあってるなー!と思うので、参考にしていただければと思います。 自分の英語スキ…