にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

kill your darling(2013) 感想

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ビートニクスを代表する作家であるアレン・ギンズバーグダニエル・ラドクリフ)と、友人ルシアン・カー(デイン・デハーン)の大学時代を描いた、実話にもとづく映画です。他にもケルアック、バロウズなどが出てきます。

ずっと見たいと思ったけど昨夜Netflixで見つけて観ました。
ちょうど「パリ・レビュー・インタビュー」のケルアックとボウルズを読んですぐに観れました。いいタイミングでした。

 

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この本、私はカポーティ目当てで買ったのですが、ケルアックとジェームズ・ボールドウィンのインタビューでルシアン・カーの名前が出てきています。収録されているインタビューもどれもとても素晴らしいので、興味を持ってる方にはとてもオススメです。

 

…でも、『ジョヴァンニの部屋』の芽はアメリカにあるのよ。デイヴィッドはぼくが考えた人物だけど、もとになったのはルシアン・カーという青年が関係した特異な事件で、かれがある人間を殺したの。かれは、ぼくの知り合いたちのあいだでは有名だったのよーーぼくは個人的には知らなかったけどね。

(ジェームズ・ボールドウィン、257)

 


『キル・ユア・ダーリン』予告編

 

 

感想

よかった~~!!
キャストと音楽と映像100点です。ビートに合わせてタイプライターうちながら麻薬でキメキメになってるシーンがまさにビートニクス!ってかんじで興奮しました。
話はちょっと駆け足しと思うとこもあったけど(2時間でもよかった)、「大学入りたての青年たちの青春映画」感があって、重い話なのに爽やかなテイストに仕上がってた。ビートニクスの詩人たちって破滅的な生き方をしてるって先入観があったんだけど、イメージが変わりました。

ルシアンが魔性の小悪魔すぎる。。バナナフィッシュのアッシュを三次元にしたみたいな色気と美。この子は大学何しに来てたんだろう。口ではすごくカッコいいこと(文学を革新する)言ってアレンやケルアックを焚きつけながら、自分は大学の宿題もできないし、裁判の口述すら人に頼むという。。その生き方を助長していたのは間違いなくデイヴィッドだったと思うけど。でも、映画に触れられているとおり、デイビッドなしでは生きていけないもろい部分、弱い部分がルシアンにはあったのだと思う。せっかくデイヴィッドと切れたのに、変わろうとせず、デイヴィッドの代わり(レポートの代筆)をアレンにまんま求める辺りけっこう未成熟な内面だったんだろうな。書くアレンもアレンだけど。でも自分でやれよ〜〜!っていうとプイッてそっぽ向いてどっか行っちゃいそうなルシアン。惚れた弱みですね。

ルシアンにとってデイヴィッドがほぼ父代わり、愛憎渦巻きながらも一蓮托生だったのだと思うと、ルシアンのデイヴィッド殺害には父殺しというテーマも感じとれる。

アレンはラドクリフ補正もあってか、苦悩続きの実直ないい奴ってかんじでした。授業でこの人の詩を読んだときはぶっとびすぎてて正直よくわからなかった(孤独のイメージはすごく強く感じたけど)んですけど、だいぶイメージが変わりました。ボートの中で読んだ詩、とてもよかった。まっすぐな愛と、純粋さがある。真っ向から愛する絶望に向かう魂を持ってる。大きすぎる黒い目と、いつもちょっと居心地悪そうにしてる感じがとても魅力的だった。くるくる変わる表情も。

そしてバロウズが一癖ある傍観者で大変好きです。この人いいキャラすぎるでしょう。パリス・レビューのインタビューで「自分には自我というものがろくにない」って言ってるんだけど、かなりそんな感じがする。でも深い部分ではすごく友達思いなんだろうなあって思う。皮肉屋で乾いて見えるけどマグマみたいな感情が奥底に眠っていそう。

ケルアックはスポーツマンでナイスガイです。この人が現れたとき、アレンはルシアンがケルアックに取られちゃうんじゃ…ってちょっとヒヤヒヤしてるんだけど、わかる。タイプとしてはちょっとヘミングウェイとだぶるかも? 雰囲気が「破天荒でダメ男だけどまあモテちゃうよね」ていう感じがあってよかった。

話は全体的に男同士の痴情のもつれ、という感じがあるのですがw、そういうの生理的に無理って人以外には観てほしいなあと思います。ビートニクスの詩人たちを好きになれる一本です。

 

蛇足

なんか、もう、映画の半分はルシアンを演じるデイン・デハーンの美と色気で構成されているような気がしてならないのですが。ほんとに美しくて気位が高くて大の男を翻弄しちゃう、儚さと魅力がある感じで。素晴らしいです。ちょっとカポーティと似ててときめきました。似てないですか?

 

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デイン・デハーン

 

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(カポーティ