にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

『怒り』感想

 

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『怒り』Netflixで見れたので見ました。飽きないで見れました。どちらかというと「え、もう終わり?」って感じで、充実した時間でした。

1. 森山未来やばい

2. 宮﨑あおい幸せになってね

3. 妻夫木ゲイゲイしすぎ&綾野剛演技の幅広い

まとめるとこんな感じでした。。でも良かった気がする。映像の説得力とか、音や場面の転換とか、きれいさはさすがだなと。端正な感じの表現をする監督だと感じました。李相日監督の映画は「悪人」を見たことがあります。当時の感想はこんな感じ。(2016/09/23付でした)↓↓

60点くらいかなあ。原作は傑作なようなので、原作を読んだほうが良かったのかなと思った。
演出とか雰囲気は好きだし、抑制された感じからの動の緩急の付け方も、場面転換の切り口も良かったと思う。キャスティングも良い。脇の満島ひかり樹木希林も凄い。ただテーマである『悪人』の掘り下げ方が足りない、浅い。紙の月見た後だから余計そう思っちゃったのかもしれないけど…。間違って人を殺しちゃった不器用なチンピラ男と、偶然出会った美女のつかの間の逃避行…みたいな昭和のメロドラマ感から抜け出せない。目指したのであろう、祐一や佳乃を取り巻く人々の善悪の交錯が立ち上がってはこなかった印象。
田舎の閉塞感も、出合い系サイトで出合いを求めて出会っちゃったり、そういうのは凄い分かる。わかる。光代は健気で良い子で、純朴な女性。祐一は、不器用で愛想がなくて頭があまり良くなくて、でも根は優しい傷つきやすい人、というのも伝わってくる。でも、中心がない。ふたりの関係が愛なのか、そうじゃないのか、がわからない。
衝撃だったのはラストの展開。そこで、あなた、絞め殺すの?って。愛を信じられなかったのか、離れ離れになることが辛かったのか、彼女を逃亡幇助者として巻き込みたくなかったのか、彼女に愛想を尽かせられたかったのか、それとも警察に対する演技だったのか。そして、首を締めあげられたとき光代はどういう思いだったのか。
それまでの2人の恋愛の経過が薄かったために答えが得られず苦しい。
映画だと結構ブレているというか、惜しい印象だった。

↑↑
「動の緩急の付け方」「演出」「雰囲気」「場面転換の切り口」はやっぱりこの時も好きだった。群像的演出は「悪人」もそうだったな。。
『悪人』より『怒り』は良かったです。簡潔になってたし、更に緊迫感が増していた。

 

1.森山未來やばすぎ


 考えてみると『怒り』は『悪人』より「悪人」に徹底的な説得力をもたせたせいで、わかりやすくなっていたのかもしれません。森山未來は『苦役列車』で見てたのでまだ「あああ…」で済んだけど、これが初森山未來だったら軽くトラウマになっていたかもしれない。
森山未來の破壊力の凄さなんなの。文字通り何かをぶっ壊すときの勢いがすごすぎる。見ながら思わず「やめなよお〜〜〜ああああ〜〜〜〜…」って言ってしまう。あのやみくもな鬱憤をぶつけるみたいな破壊の仕方はすごい。「あっこいつヤバイ、なんとなく分かってたけど、やっぱヤバイ」っていう説得力すごい。あれは呆然として見つめるしかできないわ。
あと辰也くんに襲い掛かるときに「怒」をめっちゃ刻みなおしてから行ったのすごい。あれは漫画だったらわかるけど実写であの勢いであれやれるのは…。ちょっとでもダレたら「え、何今のw」ってなりそう…。身のこなしや気迫というか勢いというかが頭のネジ外れた人のそれでしかない。
彼の「絶対悪」感はすごいよね、本当。「これしか知らない」って感じ。それなりに本当それなり〜〜〜に社会に適合しつつもヤバさが抑えきれないのがにじみ出ている。そりゃ役柄なんだろうけど本人はちゃんと社会生活できているのだろうか…できてるんだろうけど…。
落ちとしてはまあこの人になるよなーって感じ。
広瀬すずは、レイプ後の終始逆光と海と共にある美しい描かれ方に忖度を感じました。
辰也くん役の子の生々しい田舎の高校生感は良かったです。

(『苦役列車』の感想はこちら。初記事でした)

hlowr4.hatenablog.com

 

2.宮﨑あおい

この女の子ちょっと知的障害入ってますよね。本人の「私なんかといてくれる人なんかいない」って思いと、父親の「娘が幸せになれるわけがない」って思いが呼応して現れ、殺人事件とは別の重いテーマになってました。
渡辺謙がいいお父さんですね…。倒れないでほしい。松ケンの不幸で不器用で、朴訥な青年って感じの演技も良かった。愛子と田代君でこじんまりと幸せに生きていってほしい。愛子の純粋で難しいことがわからない感じが、きっと田代君には居心地が良くて、無二の存在になれたんだろうな。原作上下巻ということでかなり端折ってるんでしょうけど、演技に説得力があって、二人の愛情がひしひしと伝わってきました。
吉田修一は『女たちが二度遊ぶ』を読んだことがあって、その女性の書きかたが活きてる感じする。ちょっと欠けてる女の子を生々しく、でも愛情を持って書いている。

 3 妻夫木&綾野剛

妻夫木ゲイにしか見えなかった。最後男泣きだけどシャツの襟めっちゃあいてるのがちょっとおかしかった。ごめん。
綾野剛は『リップ・ヴァン・ウィンクルの花嫁』で胡散臭いなんでも屋役で出てて、そのイメージだったけど、カメレオンみたいに役で変われるんだなあってびっくりしました。ちょっと儚げな青年の役でしたね。ぱっと見胡散臭いけど、蓋を開けてみればなんてことない、不幸で浮世離れした男の人だった。サナトリウムでお母さんと話してるシーンが一番自然で、合ってるように見えた。

あと、愛子のお姉さん役でちょっと池脇千鶴さんが出てたんですね。妻夫木と池脇千鶴さんといえば『ジョゼと虎と魚たち』。すごく思い入れのある作品なので、ちょっと嬉しかったです。宮﨑あおいと顔似てる気がして姉妹っぽかったです。ジョゼみたいなぼんやりした身勝手な役から、チャキチャキお姉さんまでやれちゃうのがすごいっすね。