にしのひがしの

小説家志望の女が本の感想を書いてゆくブログ。

「ナイトクローラー」ゆる感

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ナイトクローラー:★★☆☆☆:

 

ダン・ギルロイ監督 ジェイク・ギレンホール主演/米
インディペンデンツ・スピリット賞 脚本賞・新人作品賞受賞

 

見ました。

最初は高卒の与太者が天職見つけて成功するサクセスストーリーなのかと思ったけどちょっと違いました。じわじわと主人公のパーソナリティがわかって来て怖い。

アシスタントの男の子が徹頭徹尾不憫。悪いことしてないのに…。

ポスター改めて見て、「人の破滅の瞬間に現れる」が基本コンセプトなら、もっとその面を如実に押し出していっても良かったのではなかろうか。破滅の瞬間を撮っていく、というよりは、人に教えられたとおり、集目性のある事件や事故の写真を追い求めていくことに焦点が当てられていたような…。

もっと死神のような不吉なイメージを出したほうが、個人的には好みだった。

基本的に主人公無双な感じのお話。でも、あの人は寝ちゃいけなかったと思う…。

「アンタの人格は最低だけど、腕だけは確かよ」みたいなスタンスでうまく付き合っていけなかったものか。最初のサバサバ女上司感がよかったんだけどな。最後にはすっかり主人公に陶酔しちゃって、「彼がみんなを成長させたの」って言っちゃうのもなんかな〜って思った。

なんというか、普段悪役側がやっていることを主人公の人がやって、因果応報でもなく、成り上がっていくみたいな感じ。王道を裏返したのが受けたんでしょうか。アカデミー賞ノミネート作品らしいし。

 

ちょっとぐぐったら、前田有一さん?のブログでは、

エスカレートするテレビ局の視聴率至上主義への批判

・ブラック時代の成功マニュアル 

の二要素、特に後者が受けたのではないかと書かれていて。起業して一攫千金を夢見る人には結構響く映画だった模様。

[…中略]

そこにこの映画のもっとも優れた問題提起がある。サイコパスでなければ成功できない、そんな世の中を作り上げてしまった私たちへの、これは痛烈な批判である。

ルイスの行動力や抜け目なさは本当に格好よいので、思わず共感してしまうところがまた恐ろしい。明らかに人間的に間違っているルイスは、現代では目指すべき成功者の資質を誰よりも持っているというわけだ。

はたしてこれをみても、気軽に若者たちに起業しろといえるのかどうか。起業とはここまで覚悟し、大切なものを捨て去る覚悟がないとうまくいかないよと、この映画は言っている。そしてそれは、私が思う限り間違っていない。

 (http://movie.maeda-y.com/movie/02019.htm)

 

 私はあまりピンとこなかったかな。でも、退屈しないで最後まで観れたので良かったです。展開にはあまり納得いかなかったし、取り立ててよい映画とも思えなかったけど。

マイク・ギレンホールはいろんなところで褒められてるみたいなので、機会があったらちがう映画も見たいです。

 

 

 

『骨を彩る』彩瀬まる 感想

読みました。

 

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:★★★★★:

 

今やってるAmazon Kindle幻冬舎文庫セールで324円で買いました。あ、でも、Kindle版は解説がない(最後まで読んで知った)というがっかりポイントがあります。。解説だけ図書館とかで読むなりでいいって方はぜひぜひ。

凄い良かったです。文章力のある作家だなあって思いました。

台詞回しも自然でわざとらしくない。「主婦」「夫」「子供」みたいなラベルの上からキャラクターを作るんじゃなくて、括弧に収まりきらないような感情とか、計算とか、生き辛さを焦点にして書かれています。

最近「少女」を記号で書いてる作品多いですね。アニメとかならそれでいいけど、小説としては、もっと生々しい生き物として読みたいなと、わたしは思う。

「美少女」じゃない、ただの「少女」が生きてるところがみたいなと。

オムニバスなのかな、以前の話にちらっと出てきた人が主人公になっていきます。ひとりひとり生きづらさを抱えていて、その瑕疵が描かれる。

全体的に読み味がきれいで、読みやすいと思います。共感できるかどうかが鍵なのかな。作者は女性の、片親の方なのかなってちょっと思いました。

何気ない比喩や表現がすごくいいです。 高校生の女の子が、初めて告白された男の子のことを「水の味をたしかめるように」、嫌いではない、と思うとか。男性視点で、ラブホに一緒に行った彼女のことを「温かい体を光らせている女」と書くとか。

特に《古生代のバームロール》と《やわらかい骨》では、女子間の、どうにもやむにやまれない奇妙な感じ、緊張感がそこはかとな〜〜く出てる。女子の残酷さとか、弱さとか、カーストにちょっと馴染めないんだよなって感じとか。表面はまあ普通のやりとりだったり、言葉だったり、間柄だったりするんだけど、背後には一瞬即発で居心地が悪い、そのわりには容易く消えそうな関係があることとか。

「少女」が可愛いとか、清楚とか、そういう記号じゃなくて、「生きる」って生々しさにぶち込まれて、悩んだり、混乱したり、傷ついたりしている。はしたないほど弱かったり、ずるいくらい生きぎたなかったり、どんくさかったり、聡かったりする。

《ばらばら》では、語り手である女性は、少女時代、義父に対して「お父さんのふりしないで」と言うことで、「義父の一番もろくて弱い部分を踏みしだいている気分」になり、「よく研いだ短剣が柔らかい肉にめり込む手応えを感じた」ことを思い出す。彼女は、同性に対して「百合の花の匂いに似たどことない生臭さ」を感じる。先に露天風呂に入っていた女性にその匂いを感じなかったことから、その人は男性なのかもしれない(ニューハーフ?)と思う。

読んでいて、微妙な感情、感覚、視点のこまさみたいなのが生々しくていい。こう、登場人物たちと膚まで一緒になった感じ、膚まで共有してる感じが味わえます。

この作家さんは、何か、誰か、ある特定の感情やそれを抱いた人たちを救うために書いてる気がする。「普通じゃない」っていう感情かな。

どの話も丁寧に作られて、綺麗でした。表紙絵の雰囲気がよく合ってます。

 

 

『南極料理人』感想

南極料理人』(2009)

監督・脚本:沖田修一 原作:西村淳 主演:堺雅人

評価:★★★☆☆

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Amazonプライムビデオでみました。

最初のシーンの「中国文化研究会」っていう幕と麻雀やってるところだけ前見たことがあって。大学のやる気ないサークルがなんやかんやで北極目指す話なのかな…って思ってたら全然違ってました。部屋自体が北極にありました。。

おじさんたちのわちゃわちゃを愛でる映画。思春期の女の子なら「きっも」て思って終わりそうな感じのありのままさ。。

くすっとくるところがたくさんあり、ゆるいんだけどすごい計算されて撮られているのかなと思います。ビデオを見ながらの体操が、最初はヨッタヨタだったのがシャキッとしていくところが面白かった。あとは伊勢エビフライを食べるときに、みんなが同時にでっかい伊勢海老の頭を皿からどけるとことか。南極の節を祝って(名前忘れた)、みんなで正装してまでフレンチを食べるところとか。

映画自体はほとんど内容がないんだけどよくわからない緊張感があって、不思議な感じ。ドラマっぽい喧嘩とか友情とか成長とかそういうのがないのがいいのかもしれない。まあ…オッサン同士だしな…みたいな。肩の力が抜けてるのがいい感じ。

個人的には豊原功補さんの白衣+眼鏡が色っぽくて素敵でした。ドクター役似合うね…。生瀬勝久さんも若々しくて格好よかった。この人のツッコミは笑えてしまう。堺雅人もあどけない感じで、にこにこ笑って可愛かった。

以下雑感。

・バターまるかじりは怖いよ。ホラーだよ。

・何故か母親と娘が可愛いと思えなかった…。どっちもなんか苦手な感じ。

・ラーメン食べれてよかったねえぇ。若干自業自得なのもゆるふわおじさんだと許せてしまうのはなぜ…。ずるい。

・人間って生まれたからにはなにはなくとも生きていかなきゃいけないし、だとするとなにはなくとも食べなきゃいけなくて、だとするとなにはなくとも料理って必要。「食べ物をつくる」(料理人)っていう、人間全部をふわっと包み込むようなポジションが、主人公の空気とよく合っていました。

 

追記

 今回からカテゴリに「ゆる感」(ゆるい感想)枠を設けてみました。がっつり考察はいらない、映画とか本とかについてはここに書いて行こうかなと思います。

前は目標高すぎて放置しちゃってたので、3日に一度くらいで何らかの感想や分析を続けていきたいです。

 

 

 

アンナ・カヴァン『氷』感想

読了しました。

 

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薄い本だし、訳も自然でつっかえるところもなかった。

難しいようでいて単純な話なんだろうなと思う。

こういう話を読むときに、何かと何かがイコールだとか分析して、関係図とか、一覧表を作ろうとしたがる人がいる。たとえば芥川龍之介の『トロッコ』が不安の現れ、とか、メタファを=とか記号でつなごうとする。受験勉強や授業みたいに、わかりやすくまとめるときには便利だし、とっかかりやすくはなるのかもしれない。でも、すべてそういう図式で済んでしまうのであれば、何も小説って形にする必要ってないなってわたしは思う。図式で表せないものを書くために小説があるし、単純化によって作者の本当の気持ちみたいなものが、指の隙間からこぼれ落ちてしまう感じがする。そう考えると、読書って丹念に気持ちや心をなぞっていくことなのかもしれない。作者の心の、生のままの迷宮を、読みほどいて再現していくことかもしれない。

『氷』はそういう小説だ。だから、これを単なる図式に還元するのは少し違う気がする。

設定はわりと荒唐無稽である。

語り手である「わたし」と、「わたし」と奇妙な一体性を持つ「長官」、そして彼らから暴力を振るわれる「少女」がいる。「わたし」は「少女」を自分の一部と考え、愛しい彼女を追って氷に侵食されつつある世界を探し回る。その世界は核兵器と氷によって滅亡に瀕し、人々は絶望を抱えている。

「少女」は幼児期の母親からの虐待によって、自分を被害者だと見なし、暴力に対し常に怯えと恐れを抱えている。この世界は奇妙にも「わたし」の心と呼応しては離れる。氷の世界は「少女」を脅かし、「わたし」を責めさいなみ、その住民を暴力と死に閉じ込めていく。

「わたし」と「長官」はどちらも少女を求め、支配し、そして痛めつける。「彼女」を支配し虐めることは、「わたし」に薄暗い快感をもたらす。「わたし」は少女を狂おしく求めており、絶えずその美しさ、儚さを讃えるが、同時に彼女を殺すのは自分だけに許されていると考えている。

「氷の世界」とは、「少女」を苛む「長官」や「わたし」のメタファでもあるようだし、「少女」を自分の一部と思う「わたし」の、絶望しきった心象風景にもみえるし、また、ただの理不尽な超常現象であるようにも読める。確定的なことは最後まで示されない。

読んでいるうちに、なんとなく「長官」はより暴力的な「わたし」なのかもしれない、と思う。ふたりはときに分裂し、対面し対立しながら、支流の川が交わるように混ざっていく。それでは「少女」は、「わたし」の被虐的な部分、痛めつけられ、傷つき、すべてを恐れ、世界には絶望という答えしか存在しないような「わたし」だろうか。あるいはそうかもしれない。そうとも読める。そうでないとも、読める。ただそうした解釈を指向するように作品は流れている。

『氷』は錯綜している。組み入った入れ子構造というか、意味と意味が明確に区分されていない。ひとつの表式がひとつを飲み込んだり、支配されたり、囚われたりする。それを示す文章をいくつか見つけた。

外の世界の非現実性は、わたし自身の乱れた心の状態を延長したように思えてくる。

この世界の冷酷さは、少女の臆病さと脆弱さが誘発しているように思われた。

少女の内にある何かが、彼女を犠牲者にすることを要求する。今ではもう[彼女とわたしの]どちらが犠牲者なのか判然としない。多分互いが互いの犠牲者なのだろう。

『氷』には相矛盾する文章が多々あるのに、意外なほどに読みやすい。文章の平易さもあるのだろうが、視点や時間軸、場面を唐突に転換するのなら、難解と感じられてもおかしくない。けれどすらすらと読める。それはなぜか。登場人物や世界の構造が非常にシンプルだからだ。追いかけるもの、逃げるもの、攻撃するもの、傷つけられるもの。病んだ人間の心のなかの、シンプルな構造がそのまま反映されている。

冒頭で、わたしが「難しいようで単純な話」と書いたのはそういうわけだ。

そのシンプルな構造は、シンプルだからこそ、読者の心の構造と呼応する。

絶望に閉じた冷めた世界と、楽園としてのインドリ。その狭間で、少女と抱き合い世界の終末を見届けることを選ぶ「わたし」。単に無味乾燥な記号でくくるのではなくて、この世界の力ない民の一人になり、心細く彷徨うのが、この本にふさわしい読まれ方だと思う。

この版の序文として、クリストファー・プリーストという人の評が訳されている。この人は「スリップストリーム文学」として『氷』を紹介する。「スリップストリーム文学」とは、“本質的に定義不能な概念”であり、“あらゆるカテゴリーづけの外にある精神の一つの状態、あるいは特殊なアプローチ”というふうに説明される。 “読者の内に「異質性」の感覚を誘発”し、“歪んだ鏡に映ったものを見てしまうような、見慣れた光景や事物をいつもとは違う角度から眺めたような感覚”を誘発する。そして、“スリップストリームは、科学(とその所産)を無意識の領域に、メタファ、エモーション、シンボルの領域にシフトさせる”。

言葉にすると難しいが、こう、現実に関するカウンターというか、現実を小説の中で作者が「私物化」してしまうような、そういう作品をさすんじゃないかと感じる。『氷』は特にそういう形式に沿うものの気がする。

もっとそういう作品を読みたい。それは小説のなかでしかできないことだし、わたしにとっては、だからこそ小説を読む意味がある。現実には、わたしなんかが受け止めきれないことが多すぎる。

 

 

 

 

 

 

2017見た映画・本一覧

覚えている範囲で書いていこうかと。。

映画

 

  1. ムーンライズ・キングダム(ウェス・アンダ―ソン、米)2012 
  2. ミザリーロブ・ライナースティーブン・キング、米)1990
  3. トゥルーマン・ショー (ピーター・ウィアー、米)1998
  4. シャイニング(スタンリー・キューブリック、英)1980
  5. 悪魔のいけにえ(トピー・フーパー、米) 1974
  6. 天才スピヴェット(ジャン・ピエール・ジュネ、仏)2014
  7. 時計じかけのオレンジスタンリー・キューブリック、英)1971
  8. アメリ(ジャン・ピエール・ジュネ、仏)2001
  9. ジャッジ 裁かれる判事(デヴィット・トプキン、米)2014
  10. アンフレンデッド(レヴァン・ガブリアーゼ、米)2016
  11. わたしはロランス(グザヴィエ・ドラン、仏・加)2013
  12. ばしゃうまさんとビッグマウス吉田恵輔、日)2013
  13. 味園ユニヴァース(山下敦弘、日)2015
  14. この世界の片隅に片渕須直・こうのふみよ、日)2016
  15. 桐島、部活やめるってよ(吉田大八・朝井リョウ、日)2012
  16. ラ・ラ・ランドデイミアン・チャゼル、米)2016
  17. サガンー悲しみよ、こんにちはー(ディアーヌ・キュリス、仏)2008
  18. 東京ゴッドファーザーズ今敏、日)2003
  19. リリーのすべてトム・フーパー、米)2015
  20. ふがいない僕は空を見たタナダユキ窪美澄、日)2012
  21. ムーンライト(バリー・ジェンキンス、米)2017
  22. 作家、本当のJ.T.リロイジェフ・フォイヤージーク、米)2016
  23. ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ (マイケル・グランデージ、米)2016
  24. 苦役列車山下敦弘、日)2012 ※記事あり
  25. メアリと魔女の花米林宏昌、日)2017 ※記事あり
  26. 静かなる情熱 エミリー・ディキンスン(シンシア・ニクソン、米)2017
  27. 娚の一生廣木隆一、日)2014 ※記事あり
  28. 怪盗グルーの月泥棒 (クリス・ルノー、米)2010 ※記事あり
  29. かいじゅうたちのいるところスパイク・ジョーンズ、米)2009
  30. 告白(中島哲也、日)2010 ※記事あり
  31. ブロークバック・マウンテンアン・リー、米)2005
  32. SEVEN(デヴィッド・フィンチャー、米)1995 ※記事あり
  33. マイ・ブルーベリー・ナイツウォン・カーウァイ、香中仏)2007
  34. リップヴァンウィンクルの花嫁(岩井俊二、日)2016 ※記事あり
  35. キャロル(トッド・ヘインズ、米)2015
  36. バードマン(あるいは無知がよたらす予期せぬ奇跡)(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、米)2014
  37. ニューイヤーズ・イブ(ゲイリー・マーシャル、米)2011
  38. メイドインアビス [アニメ] (小島正幸、つくしあきひと、日)2017

 

 

  1. 灯台へ ヴァージニア・ウルフ ※記事あり
  2. 劇場 又吉直樹
  3. 瓦礫の天使たちーベンヤミンから映画の『見果てぬ夢』へー ※記事あり
  4. 太陽がいっぱい パトリアシア・ハイスミス  ※記事あり
  5. アメリカの友人 〃
  6. 贋作 〃 
  7. 月と6ペンス モーム ※記事あり
  8. 地下街の人びと ジャック・ケルアック ※記事あり
  9. まなざしの記憶 鷲田清一植田正治
  10. 木島日記 大塚英志
  11. ヴァリス P.K.ディック
  12. ...

 

こんな感じでしょうか。

特に本は上京したばっかりで、狭い部屋から逃げ出して、カフェや図書館や喫茶店でずっと読んでた時期に稼いだ感があります。映画は年初映画好きの人と付き合ってたので結構見たな…。思い出が溢れ出ますね、やっぱり。。

今年はNETFLIXも契約したし、家も引っ越したし、この倍くらいは伸ばしたいところです。

2018見た映画と本一覧

 更新あんまりしていなかったのですが、今月のPVが100行ってました。来てくださってる方本当にありがとうございます。今年もよろしくお願いします。

にしのの2018年の目標は、映画100本、本100冊読む!というものです。

ずっと小説家ワナビでいないためにも、たくさん物語を消化して、触れていかなきゃと思います。「小説を書こう」と思っても、長く二次創作を書いてたためか、物語の構成が全くわからない感があるので…。

本当は見た映画すべて、読んだ本すべてについて記事がかければいいのですが、合わないやつや書きづらいものも出てきてしまって。無理やりも苦痛になってしまうし、このブログにはグッときたものの感想だけしたためていければいいのかなと。なので、今年は見たものリストを作ることにしました。順次書いていければ…いいな…。

 

映画

 

  1. 怒り (李正日・吉田修一、2016) ※記事あり
  2. オートマタ (ガベ・イバニェス、2014)
  3. アメリカンホラーストーリー S1 
  4. きいろいゾウ ※見直し (廣木隆一、2012)
  5. 百円の恋 (武正晴、2014)
  6. FARGO  (コーエン兄弟、1996)
  7. ストロベリーショートケイクス
  8. 真珠の耳飾りの少女
アニメ

・DEVIL MAN CRYBABY S1-6話まで

甲殻機動隊 S1-22話まで 

Fate stay/night UBW S2-2話まで

墓場鬼太郎 S1-5話まで

 

書籍

1月

  1. 人間仮免中 (卯月妙子、2012)
  2. 人生仮免中つづき  (〃、2016)
  3. 人間の土地 (サン・テグジュペリ、1939)
  4. 凪のおいとま 1ー3巻
  5. アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(P.K.ディック、1968)
読みかけ

嵐が丘

・夜間飛行

・この人を見よ

・Flowers for Algernon(原書)Daniel Keyes, 1966

 

 とりあえず今月はこんな感じです。続きものの漫画やアニメ・ドラマの処理をどうするのか悩みますが…。とりあえずシリーズやシーズンの最新の話で見たら一作品としてカウントしようかな。そんな厳密じゃなくてもいいとは思いますが。

映画一本でも、途中で見るのをやめるのが結構多いんですよね。今月だけでも、パルプフィクションインセプションインターステラー、トム・アット・ザ・ファーム、帰ってきたヒトラーぼくのエリ 200歳の少女…が途中になってる。。うー…。でも全部見ないでカウントするのは不純だしな。。

一応このページには通年の一覧を書いて、月ごとにも、新しい記事で、Twitter等にあげた感想をつけてまとめなおしていこうと思います。

あんまりキッチリしようとすると続かないので、ゆるゆるとやっていけたらいいです。続けるためには、ゆるゆる大事ですよね。でも、今月はもう1本くらい映画見ときたいところだなー、足りないや…。見途中のを一本でも見終えられればいいな。時間をおくと億劫になってきてしまうけども。

 

『怒り』感想

 

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『怒り』Netflixで見れたので見ました。飽きないで見れました。どちらかというと「え、もう終わり?」って感じで、充実した時間でした。

1. 森山未来やばい

2. 宮﨑あおい幸せになってね

3. 妻夫木ゲイゲイしすぎ&綾野剛演技の幅広い

まとめるとこんな感じでした。。でも良かった気がする。映像の説得力とか、音や場面の転換とか、きれいさはさすがだなと。端正な感じの表現をする監督だと感じました。李相日監督の映画は「悪人」を見たことがあります。当時の感想はこんな感じ。(2016/09/23付でした)↓↓

60点くらいかなあ。原作は傑作なようなので、原作を読んだほうが良かったのかなと思った。
演出とか雰囲気は好きだし、抑制された感じからの動の緩急の付け方も、場面転換の切り口も良かったと思う。キャスティングも良い。脇の満島ひかり樹木希林も凄い。ただテーマである『悪人』の掘り下げ方が足りない、浅い。紙の月見た後だから余計そう思っちゃったのかもしれないけど…。間違って人を殺しちゃった不器用なチンピラ男と、偶然出会った美女のつかの間の逃避行…みたいな昭和のメロドラマ感から抜け出せない。目指したのであろう、祐一や佳乃を取り巻く人々の善悪の交錯が立ち上がってはこなかった印象。
田舎の閉塞感も、出合い系サイトで出合いを求めて出会っちゃったり、そういうのは凄い分かる。わかる。光代は健気で良い子で、純朴な女性。祐一は、不器用で愛想がなくて頭があまり良くなくて、でも根は優しい傷つきやすい人、というのも伝わってくる。でも、中心がない。ふたりの関係が愛なのか、そうじゃないのか、がわからない。
衝撃だったのはラストの展開。そこで、あなた、絞め殺すの?って。愛を信じられなかったのか、離れ離れになることが辛かったのか、彼女を逃亡幇助者として巻き込みたくなかったのか、彼女に愛想を尽かせられたかったのか、それとも警察に対する演技だったのか。そして、首を締めあげられたとき光代はどういう思いだったのか。
それまでの2人の恋愛の経過が薄かったために答えが得られず苦しい。
映画だと結構ブレているというか、惜しい印象だった。

↑↑
「動の緩急の付け方」「演出」「雰囲気」「場面転換の切り口」はやっぱりこの時も好きだった。群像的演出は「悪人」もそうだったな。。
『悪人』より『怒り』は良かったです。簡潔になってたし、更に緊迫感が増していた。

 

1.森山未來やばすぎ


 考えてみると『怒り』は『悪人』より「悪人」に徹底的な説得力をもたせたせいで、わかりやすくなっていたのかもしれません。森山未來は『苦役列車』で見てたのでまだ「あああ…」で済んだけど、これが初森山未來だったら軽くトラウマになっていたかもしれない。
森山未來の破壊力の凄さなんなの。文字通り何かをぶっ壊すときの勢いがすごすぎる。見ながら思わず「やめなよお〜〜〜ああああ〜〜〜〜…」って言ってしまう。あのやみくもな鬱憤をぶつけるみたいな破壊の仕方はすごい。「あっこいつヤバイ、なんとなく分かってたけど、やっぱヤバイ」っていう説得力すごい。あれは呆然として見つめるしかできないわ。
あと辰也くんに襲い掛かるときに「怒」をめっちゃ刻みなおしてから行ったのすごい。あれは漫画だったらわかるけど実写であの勢いであれやれるのは…。ちょっとでもダレたら「え、何今のw」ってなりそう…。身のこなしや気迫というか勢いというかが頭のネジ外れた人のそれでしかない。
彼の「絶対悪」感はすごいよね、本当。「これしか知らない」って感じ。それなりに本当それなり〜〜〜に社会に適合しつつもヤバさが抑えきれないのがにじみ出ている。そりゃ役柄なんだろうけど本人はちゃんと社会生活できているのだろうか…できてるんだろうけど…。
落ちとしてはまあこの人になるよなーって感じ。
広瀬すずは、レイプ後の終始逆光と海と共にある美しい描かれ方に忖度を感じました。
辰也くん役の子の生々しい田舎の高校生感は良かったです。

(『苦役列車』の感想はこちら。初記事でした)

hlowr4.hatenablog.com

 

2.宮﨑あおい

この女の子ちょっと知的障害入ってますよね。本人の「私なんかといてくれる人なんかいない」って思いと、父親の「娘が幸せになれるわけがない」って思いが呼応して現れ、殺人事件とは別の重いテーマになってました。
渡辺謙がいいお父さんですね…。倒れないでほしい。松ケンの不幸で不器用で、朴訥な青年って感じの演技も良かった。愛子と田代君でこじんまりと幸せに生きていってほしい。愛子の純粋で難しいことがわからない感じが、きっと田代君には居心地が良くて、無二の存在になれたんだろうな。原作上下巻ということでかなり端折ってるんでしょうけど、演技に説得力があって、二人の愛情がひしひしと伝わってきました。
吉田修一は『女たちが二度遊ぶ』を読んだことがあって、その女性の書きかたが活きてる感じする。ちょっと欠けてる女の子を生々しく、でも愛情を持って書いている。

 3 妻夫木&綾野剛

妻夫木ゲイにしか見えなかった。最後男泣きだけどシャツの襟めっちゃあいてるのがちょっとおかしかった。ごめん。
綾野剛は『リップ・ヴァン・ウィンクルの花嫁』で胡散臭いなんでも屋役で出てて、そのイメージだったけど、カメレオンみたいに役で変われるんだなあってびっくりしました。ちょっと儚げな青年の役でしたね。ぱっと見胡散臭いけど、蓋を開けてみればなんてことない、不幸で浮世離れした男の人だった。サナトリウムでお母さんと話してるシーンが一番自然で、合ってるように見えた。

あと、愛子のお姉さん役でちょっと池脇千鶴さんが出てたんですね。妻夫木と池脇千鶴さんといえば『ジョゼと虎と魚たち』。すごく思い入れのある作品なので、ちょっと嬉しかったです。宮﨑あおいと顔似てる気がして姉妹っぽかったです。ジョゼみたいなぼんやりした身勝手な役から、チャキチャキお姉さんまでやれちゃうのがすごいっすね。